こんばんは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今日は、「警察官を名乗る詐欺電話」について、心理学の視点からお話しします。
先日、知人からこんな話を聞きました。
*******
「この前、知らない電話番号から電話があったんだよね。
発信番号は携帯の番号。
それでね、俺の名前を知ってたんだよね。
フルネームで。
相手は警察を名乗っててね。
これ詐欺?って思ったんだけど、警察名乗ってるし不安になってね。
それで一応、その警察の番号調べてかけなおしたんだ。
そしたらそんな事実はないってわかって。
やっぱり詐欺だったんだなって思ったんだけど、一瞬『これほんと?』って思った自分がいるのも事実で。
結構怖いなって思ったんだ。」
*******
「詐欺だとわかっていても、一瞬『これほんと?』と思った」
この感覚、とても正直な反応だと思います。。。
フルネームを知っていて、警察を名乗っている。
その2つが重なったとき、人の心理に何が起きているのか。
今日はその構造を整理してみたいと思います。
この記事でわかること
- 警察官を名乗る詐欺師が使っている、心理的な手口の構造
- 「一瞬信じてしまう」側に起きている、心理的なメカニズム
- 2025年〜2026年の最新トレンドと、知っておくべき対処法
まず、現状を数字で見てみましょう
警察庁の確定値によると、2025年の特殊詐欺の認知件数は27,832件、被害額は過去最悪となる約1,423億円を記録しました。
前年からほぼ倍増という異例の増加です。
その中でも「ニセ警察詐欺」は1万1,014件と前年比で倍増し、被害額は1,005億円に達しています。
特殊詐欺全体の被害額の約70%をニセ警察詐欺が占めるという、深刻な状況になっています。
かつては高齢者が中心的な被害者でしたが、現在はセキュリティ意識が高いはずの現役世代も被害に遭うケースが相次いでいます。
これはもはや「自分には関係ない」と言い切れる問題ではなくなっているのです。
「ひっかける側」の心理。なぜ「警察」を名乗るのか
①「権威」は、人間の判断を止める
詐欺師が警察を名乗る最大の理由は、「権威」という心理的な力を利用するためです。
人間は、権威ある存在からの言葉に対して、無意識のうちに疑いを緩めやすいという特性があります。
「警察が言うなら本当かもしれない」
「警察に失礼なことをしてはいけない」
という心理が、批判的に考える力をいったん止めてしまうのです。
これは心理学で「権威への服従」と呼ばれる、人間の普遍的な傾向です。
スタンレー・ミルグラムの有名な実験でも、権威ある存在の指示に人はいかに従いやすいかが示されています。
②フルネームを知っている。「情報の非対称性」で優位に立つ
相手がフルネームを知っていたことが、知人を一瞬信じさせた理由のひとつです。
これは「情報の非対称性」を利用した手口です。
「相手が自分を知っている」という事実は、「相手は本物だ」という証拠にはなりません。
しかし、人間の心理はその2つを無意識に結びつけてしまいやすいのです。
個人情報はSNS、名刺、流出したデータベース、様々なルートから比較的安価に入手できます。
フルネームを知っているだけで「本物感」が生まれるということを、詐欺師は熟知しているのです。
③不安を煽り、「確認する余裕」を奪う
「あなたに逮捕状が出ている」
「あなたの口座が犯罪に使われている」
こうした言葉は、相手に強い不安と焦りを与えます。
不安と焦りは、「ちょっと待って、確認してみよう」という冷静な判断力を奪います。
詐欺師は意図的にこの状態を作り出し、相手が立ち止まって考える間を与えないように、畳み掛けるように話を進めてくるのです。
「一瞬信じてしまう」側の心理。なぜ知識があっても揺らぐのか
①「疑うこと自体が失礼」という心理的ハードル
警察という存在を疑うことは、多くの人にとって心理的なハードルが高いことです。
「もし本当に警察だったら、疑って失礼なことをしてしまった」
という後ろめたさが、確認行動を躊躇させることがあります。
詐欺師はこの心理を知っていて、「疑うこと自体が失礼に見える状況」を意図的に作り出しています。
②「もしかして本当だったら」という最悪ケース思考
「99%詐欺だとわかっていても、1%本当だったら大変なことになる」
この思考パターンが、行動を止めにくくします。
特に「逮捕」「口座凍結」「犯罪者扱い」といった、現実になれば人生に大きな影響を与えるキーワードが使われると、人は「万が一」を無視できなくなるのです。
③「知っている」と「対処できる」は別の話
前回のフィッシング詐欺の記事でもお伝えしましたが、「詐欺を知っている」ことと「その瞬間に適切に対処できる」ことは、まったく別の問題です。
知人が一瞬「これほんと?」と思ったのは、知識が足りなかったからではありません。
「警察」「フルネーム」「不安」という3つの要素が重なったとき、どんなに冷静な人でも心が揺らぐように設計された手口だったのです。
2025年〜2026年の最新トレンド
①電話番号の偽装(スプーフィング)が巧妙化
警視庁の注意喚起によると、着信画面に警察署の代表電話番号(03-3581-4321など)を偽装表示する手口が急増しています。知人のケースは携帯番号でしたが、「警察の代表番号」が表示されることで、より信頼させる手口もあります。
「その番号から電話が来た」という事実は、「本物の警察からの電話だ」という証拠にはなりません。番号の偽装は比較的簡単にできるのです。
②2段階・3段階の複合手口
最初に「通信会社」や「総務省」を名乗って不安を煽り、その後「警察官役」に代わるという2段階の手口が増えています。
さらにSNSやビデオ通話に誘導し、偽の警察手帳や逮捕状を「見せる」ことで視覚的にも信頼させる3段階の手口も確認されています。
③AI音声の悪用が始まっている
AI技術の進歩により、実在する人物の声を模倣した音声の生成が可能になりつつあります。
将来的には「実在する警察官の声」を使った詐欺電話が増える可能性も指摘されており、「声が本物に聞こえる」という判断基準も、今後通用しなくなっていく可能性があります。
知人がとった行動は、正しい対処でした
「その警察の番号を自分で調べてかけなおした」
この行動は、詐欺対策として最も有効な対処法のひとつです。
警察庁や警視庁も明確に「一旦電話を切り、自分で公式番号を調べて折り返す」という対処法を推奨しています。
本物の警察官であれば、この慎重な対応を理解し、待ってくれるはずです。
「一瞬揺らいだ」という事実は、弱さでも知識不足でもありません。
そのように設計された手口に対して、最後に正しい行動を取れた
それで十分なのです。
💞 あの人の言動を、もっと深く知りたい方へ
「恋愛カルテ」という名前ですが、対象は恋愛関係に限りません。
身近な人の言動の背景を、行動分析と心理学の視点から個別に読み解くこともできます。
まとめ
- 2025年の特殊詐欺被害額は過去最悪の約1,423億円。
ニセ警察詐欺は1万1,014件・被害額1,005億円で、特殊詐欺全体の被害額の約70%を占める - 「警察」という権威・「フルネームを知っている」という情報優位・「不安を煽る」という感情操作の3つが重なって、判断を狂わせる
- 「疑うことが失礼」「万が一本当だったら」という心理が、行動を止めにくくする
- 電話番号の偽装・2〜3段階の複合手口・AI音声の悪用が最新トレンド
- 「一旦電話を切り、公式番号を自分で調べて折り返す」が最も有効な対処法
- 「一瞬揺らいだ」ことは弱さではなく、そう設計された手口への自然な反応
詐欺師は、「人が何を信じやすいか」を熟知した心理の専門家でもあります。
その構造を知っておくことが、自分と大切な人を守る最初の一歩になるのです。
公式LINEのご案内
💬 公式LINE(お問い合わせ窓口)
ご質問やご相談はLINEからどうぞ。内容によってはブログでお答えすることもあります。