こんばんは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今日は、フィッシング詐欺について、心理学の視点からお話ししたいと思います。
先日、知人からこんな話を聞きました。
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「これだけ頻繁に注意喚起行っていて、それでもまだひっかかる人っているのかな?
それに迷惑メール増える一方だし。ひっかける側も引っかかる側も増えてるってことなのかな?」
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確かに、そう感じますよね。。。
不在案内そっくりのSMS、カード会社の有効期限切れを装ったメール。
見ればわかるはずなのに、なぜ引っかかる人が後を絶たないのでしょうか。
そして、なぜ詐欺師は増え続けているのでしょうか。
この記事では、「ひっかける側の心理」と「引っかかる側の心理」、そして最新のトレンドを、行動と心理の視点から考えてみたいと思います。
この記事でわかること
・なぜフィッシング詐欺が増え続けているのか、その構造的な理由
・「ひっかける側」が使っている、人間の心理のどこを突いているのか
・「引っかかる側」に起きている、心理的なメカニズム
・2025年〜2026年の最新トレンドと傾向
まず、現状を数字で見てみましょう
フィッシング詐欺の報告件数は、2020年から2025年にかけて6年連続で増加しており、2025年の国内報告件数は過去最多となる約245万件に達しています。
2020年と比べると、5年間で約10倍以上に増加していることになります。
注意喚起は増えているのに、被害も増えている。
この矛盾の正体は、「手口の巧妙化」と「人間の心理の普遍性」という、2つの要因が重なっています。
「ひっかける側」の心理——なぜ詐欺師は増え続けるのか
①コストが低く、リターンが大きい
フィッシング詐欺は、詐欺師にとって「費用対効果」が非常に高い犯罪です。
メールやSMSを大量送信するツールは安価に入手でき、ほとんどの作業が自動化できます。
100万通送って1人引っかかれば十分に「元が取れる」という構造になっているのです。
人件費も設備費も不要で、一度仕組みを作ってしまえばあとは自動で動く。
これが詐欺師が減らない、むしろ増え続ける最大の理由です。
②「権威」と「信頼」を借りることで、自分のリスクを減らしている
詐欺師が有名企業・公的機関を名乗るのは、相手を騙しやすくするためだけではありません。
「有名な組織のふりをしているだけ」という意識が、詐欺師自身の心理的なハードルを下げているという側面もあります。
自分が作り出した嘘ではなく、「既存の信頼を借りている」という感覚が、罪悪感を薄めやすくするのです。
③進化する手口 ※AIの登場でさらに精度が上がった※
かつてのフィッシングメールは、不自然な日本語や明らかなデザインの粗さで見分けることができました。
しかし、生成AIの登場によって、自然で流暢な文章、本物そっくりのデザイン、個人情報を組み込んだパーソナライズされたメッセージが、低コストで大量に作れるようになっています。
「これは明らかに怪しい」という判断基準が、急速に通用しなくなっているのです。
「引っかかる側」の心理——なぜ賢い人でも騙されるのか
①「自分は大丈夫」という楽観バイアス
心理学者のワインスタインが行った研究では、約80%の人が「自分は平均より騙されにくい」と信じていることが明らかになっています。
この「自分だけは大丈夫」という思い込みを「楽観バイアス」と言いますが、この過信が、最大の盲点になります。「詐欺を知っている」ことと「詐欺に対処できる」ことは、まったく別の問題なのです。
②「速い脳」が「遅い脳」より先に動いてしまう
ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンは、人間の思考を「速い脳(システム1)」と「遅い脳(システム2)」に分類しました。
システム1は直感的・反射的で、すぐに判断を下します。システム2は論理的・批判的で、じっくり考えます。
フィッシング詐欺は、「緊急」「重要」「今すぐ確認」という言葉で、システム1を働かせ、システム2が介入する前に行動を起こさせるように設計されているのです。
「クリックしてから、あ、おかしい」と気づいた時には、もう遅い。
これがシステム1の罠です。
③「信頼性」「不安」「やましい気持ち」を同時に突いてくる
フィッシング詐欺が人の心理を突いているポイントは、大きく3つです。
・「信頼性」:実在する有名企業や公的機関を名乗ることで、疑う気持ちを下げる
・「不安」:「未払いがあります」「不正アクセスを検知しました」という言葉で、感情を揺さぶる
・「やましい気持ち」:「心当たりがある」と感じた瞬間、冷静な判断力が下がりやすくなる
この3つが重なったとき、人は「確認しなければ」という衝動に抗えなくなるのです。
④疲れているとき・忙しいときほど、判断力が下がる
人間の判断力は、体や脳の状態に大きく左右されます。
疲労、ストレス、睡眠不足、多忙な状況では、批判的に考える力が著しく低下します。
統計的にも、フィッシング詐欺の被害は帰宅直後の夜間や、仕事で疲れた状態の時間帯に多い傾向があるとされています。
「今は疲れているから、後で確認しよう」という判断ができる状態のときは、まだ安全です。
しかし、「今すぐ確認しないと大変なことになる」という不安が加わると、疲れているにもかかわらず、その場で行動してしまいやすくなるのです。
2025年〜2026年の最新トレンド
①スマートフォンを狙ったSMS詐欺(スミッシング)が急増
フィッシング対策協議会の2025年調査によると、インターネットのメイン端末としてスマートフォンを使う人は約65.5%に達しています。
画面が小さくURLの全体像が確認しにくいスマホは、詐欺師にとって狙いやすい環境です。
宅配不在通知、ETCカード、銀行のSMSを装った詐欺が特に増加しています。
②QRコードを使った新手口
メールに記載されたURLではなく、QRコードを使った手口が増えています。
QRコードはセキュリティソフトのフィルターをすり抜けやすく、かつ読者が「URLを手打ちして確認する」という防衛行動を取りにくいという特性があります。
③音声と文字を組み合わせた「ボイスフィッシング」
メールやSMSだけでなく、電話での音声誘導を組み合わせた攻撃が台頭しています。
「メールを送りましたので確認してください」という電話が来てから、フィッシングメールに誘導するという2段階の手口が、特に信頼感を高めやすいため注意が必要です。
「自分は大丈夫」が最大の落とし穴
ここまで読んでくださった方はもうわかっていただけると思います。
フィッシング詐欺が増え続けているのは、「引っかかる人がバカだから」ではありません。
人間の心理の普遍的な特性『楽観バイアス、速い脳の反射、権威への信頼、不安への反応』を、精巧に突いてくるからなのです。
「自分は知っているから大丈夫」と思った瞬間が、実は最も危険な瞬間です。
💞 あの人の言動を、もっと深く知りたい方へ
「恋愛カルテ」という名前ですが、対象は恋愛関係に限りません。
身近な人の言動の背景を、行動分析と心理学の視点から個別に読み解くこともできます。
まとめ
・フィッシング詐欺の国内報告件数は2025年に過去最多の約245万件を記録し、5年で約10倍に増加している
・詐欺師が増え続けるのは、低コスト・高リターンで自動化できる犯罪だから
・生成AIの登場で手口が急速に精巧化し、「見ればわかる」という判断基準が通用しなくなっている
・引っかかる人の心理には、楽観バイアス・速い脳の反射・信頼と不安の同時利用・判断力の低下という普遍的な要因がある
・最新トレンドはスマホSMS詐欺・QRコード・ボイスフィッシングの複合化
・「自分は大丈夫」と思った瞬間が最も危険
詐欺師は「人間の心理の専門家」でもあります。
その手口を知っておくことが、自分を守る最初の一歩になるのです。
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