「あの人は発達障害?」と言う前に知ってほしい診断のプロセス

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こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。

最近、「あの人はちょっと変わっているから発達障害(はったつしょうがい)なんじゃない?」という言葉を耳にすることがあります。
けれども実際には、発達障害の診断はとても慎重(しんちょう)なプロセスを経て行われるものです。

この記事では「診断はどのように進んでいくのか?」を、専門用語にフリガナをふりながら、できるだけやさしく解説します。


1. 「少しできない」=すぐ発達障害ではない

人にはだれでも得意(とくい)・不得意(ふとくい)があります。
計算が苦手でも音楽が得意な人、運動は苦手でも美術が得意な人など、個性(こせい)はさまざまです。

発達障害と診断されるのは、苦手さが日常生活(にちじょうせいかつ)や学業(がくぎょう)、仕事に大きな影響を与えている場合です。
つまり、「ちょっとできないことがある」=すぐ発達障害、というわけではありません。


2. 診断が考えられるとき(気になるサイン)

次のような状況が続いていると、診断を検討(けんとう)するきっかけになります。

  • 学校や職場で生活に大きな困難(こんなん)がある
  • 友人関係(ゆうじんかんけい)がうまくいかずトラブルが続く
  • 集中力(しゅうちゅうりょく)が続かないため学習(がくしゅう)や仕事が難しい
  • 本人や家族が「このままではつらい」と感じている

こうしたとき、学校の先生、家族、あるいは本人が「専門機関(せんもんきかん)で相談(そうだん)してみよう」と思うのがスタート地点です。


3. 医療機関(いりょうきかん)を受診(じゅしん)する

診断を受けるためには、まず 専門の医療機関 に行きます。

  • 小児科(しょうにか)や児童精神科(じどうせいしんか)
  • 精神科(せいしんか)や心療内科(しんりょうないか)

などが対象です。地域によっては「発達外来(がいらい)」という専門外来があります。

最初の受診では、これまでの発達歴(はったつれき)や困っていることを丁寧(ていねい)に聞かれます。


4. 問診(もんしん)と聞き取り

医師(いし)は本人だけでなく、家族や保護者(ほごしゃ)にも詳しく話を聞きます。
生まれてからの成長のようす、学校や家庭での行動パターンなどが大切な情報になります。

学校からの報告書(ほうこくしょ)や成績表などが参考にされることもあります。


5. 行動観察(こうどうかんさつ)と心理検査(しんりけんさ)

次に行われるのが、**観察(かんさつ)や検査(けんさ)**です。

  • 行動観察:待合室(まちあいしつ)や診察室(しんさつしつ)でのようすを見守る
  • 心理検査:知能検査(ちのうけんさ)、発達検査(はったつけんさ)、質問紙(しつもんし)など

心理検査では、記憶力(きおくりょく)、言語能力(げんごのうりょく)、注意力(ちゅういりょく)などを細かく調べます。


6. 医師(いし)が総合的(そうごうてき)に判断(はんだん)する

問診、観察、心理検査の結果をすべてあわせて、医師が診断を下します。
つまり、ひとつのテストだけで決まるわけではなく、総合的に判断されるのです。

診断は「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD(学習障害)」など、医学的な分類(ぶんるい)に基づいて行われます。


7. 診断のあとにできること

診断が出ると、それをきっかけに支援(しえん)や工夫を受けやすくなります。

  • 学校での合理的配慮(ごうりてきはいりょ):席の位置を工夫する、課題を分けて出すなど
  • 医療やカウンセリングでのサポート
  • 障害者手帳(しょうがいしゃてちょう)や福祉サービスの利用

診断は「ラベルをつけるため」ではなく、本人が生きやすくなるためのサポートにつなげるためのものです。


8. まとめ

発達障害の診断は、

  1. 困難が続いていることに気づく
  2. 医療機関を受診する
  3. 問診と観察、心理検査を受ける
  4. 医師が総合的に判断する
    という流れで行われます。

「ちょっと変わっているから発達障害だ」と簡単に言えるものではありません。
診断は専門的なプロセスを経て、本人の生活を助けるためにあります。

そして「発達障害(はったつしょうがい)の診断(しんだん)は、けっして『あなたはこうだ』と決めつけるためのものではありません。
むしろ、困っていることに名前をつけ、サポートを受けやすくするための入口(いりぐち)です。

もし『もしかして…?』と感じている方がいたら、一人で抱(かか)えこまなくても大丈夫です。
相談できる場所や人は必ずあります。

あなたやあなたの大切な人が、少しでも安心して、自分らしく生きられるように。
このブログがそのためのヒントになればうれしいです。」

心理カウンセラー
伊藤憲治 ReCocoro(リココロ)