「また同じこと聞いてる」と言われるのはなぜ?

― 発達特性との関連も含めた脳の情報処理の整理 ―

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1. はじめに

こんにちは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。

「それ、さっきも言ったよね?」

悪気はないのに、同じことを何度も聞いてしまう。
聞いた記憶はあるのに、内容が思い出せない。
あるいは、理解しているはずなのに不安になり、再確認してしまう。

この現象は、性格や努力不足の問題と単純化できるものではありません。
注意・記憶・不安といった 情報処理の特性として整理できる可能性があります。

今回は、研究で示されている知見と、臨床的に用いられる説明モデルを分けながら整理してみました。


2. 概念整理:どの段階で起きているのか

「同じことを聞いてしまう」という行動は、主に次の3段階と関連する可能性があると言われています。

  • 入力(注意が向くか)
  • 保持(ワーキングメモリが持続するか)
  • 確認(不安や確実性への欲求)

これをもとに順に見ていきたいと思います。


3. 研究で支持されている部分

① 保持の問題:ワーキングメモリとの関連

ワーキングメモリとは、
情報を一時的に保持し操作する機能です。

ADHD傾向のある子どもを対象としたメタ分析では、
ワーキングメモリ課題における弱さが報告されています
(Martinussen et al., 2005;Kasper et al., 2012)。

※これらは主に小児研究であり、成人への一般化には慎重さが必要です。

保持が十分に機能しない場合、
情報が長期記憶へ定着する前に失われる可能性があると言われています。


② 入力の問題:注意と記憶の相互作用

認知神経科学の研究では、
注意が向けられた情報ほど記憶に残りやすいことが示されています
(Chun & Turk-Browne, 2007)。

耳で聞いていても、
注意が別の対象へ向いている場合、
記憶への定着が弱まる可能性があると言われています。

これは態度の問題ではなく、
注意制御の特性として理解されることがあります。


4. 臨床的モデルで整理される部分

③ 確認の問題:不安と不確実性耐性

ASD傾向と不安の関連については、
不確実性への耐性(Intolerance of Uncertainty)が関与する可能性が
系統的レビュー・メタ分析で示されています
(Jenkinson et al., 2020)。

また、不安や強迫傾向においては、
再確認行動が安心を得るための行動として説明されるモデルがあります
(Salkovskis, 1985)。

理解していても、

  • 間違っていたらどうしよう
  • 誤解していたら問題になるかもしれない

といった不安が強い場合、
再確認行動が増えることがあります。


5. まとめ

「同じことを聞いてしまう」背景には、

  • 入力(注意が十分に向かない)
  • 保持(作業記憶が持続しにくい)
  • 確認(不確実性への不安)

という複数の経路が考えられます。

人格の問題と捉えるよりも、
どの段階に負荷がかかっているかを整理することが建設的だったりします。


6. 対処方法

① 外部化する

  • 聞いた瞬間にメモする
  • 決定事項はテキストで残す

頭の中以外で覚えておくことによって、ワーキングメモリの負荷軽減につながります。


② 視覚情報を活用する

口頭のみではなく、
メッセージやメールなど形で残るようにしておくことで、
再確認回数を減らせる可能性があります。


③ 再確認時に前置きを添える

「念のため確認させてください」
と一言添えることで、
対人摩擦を軽減できます。


7. まとめ

同じことを繰り返し聞いてしまうことは、
必ずしも人格の問題ではありません。

注意・記憶・不安といった要因が関与する
情報処理の現象として整理できます。

構造を理解し、仕組みで補うことで、日常で起こるストレスを軽減できるようになります。


🌙 もし辛くなったり苦しくなったら。

もし、ひとりで整理するのが辛くなったり苦しくなったら、
「話す」という選択肢があることを忘れないでくださいね。



参考文献

Martinussen, R., Hayden, J., Hogg-Johnson, S., & Tannock, R. (2005).
A meta-analysis of working memory impairments in children with attention-deficit/hyperactivity disorder. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 44(4), 377–384.

Kasper, L. J., Alderson, R. M., & Hudec, K. L. (2012).
Moderators of working memory deficits in children with attention-deficit/hyperactivity disorder: A meta-analytic review. Clinical Psychology Review.

Chun, M. M., & Turk-Browne, N. B. (2007).
Interactions between attention and memory. Current Opinion in Neurobiology, 17(2), 177–184.

South, M., & Rodgers, J. (2017).
Anxiety and ASD: Current Progress and Ongoing Challenges. Journal of Autism and Developmental Disorders.

Jenkinson, R., et al. (2020).
The relationship between intolerance of uncertainty and anxiety in autistic people: A systematic review and meta-analysis. Autism Research.

Salkovskis, P. M. (1985).
Obsessional-compulsive problems: A cognitive-behavioural analysis. Behaviour Research and Therapy, 23(5), 571–583.

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心理カウンセラー 伊藤憲治
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