――「守られる」の正体と、法定雇用率2.7%が意味するもの
こんにちは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けたあと、
「このまま一般雇用で働き続けていいのだろうか」
「障害者雇用なら、少しは守られるのだろうか」
そう考える人は少なくありません。
一方で、
- 障害者雇用は安定している
- 一度入れば切られない
- でもキャリアは終わる
といった、極端なイメージも広がっています。
実際のところ、障害者雇用は「万能な保護」でも「行き止まり」でもありません。
制度としての仕組みと、企業側の事情を分けて理解することで、見え方はかなり変わってきます。
この記事では、
- 障害者雇用がどんな制度なのか
- ADHDの人にとってのメリット・限界
- そして、2026年7月に予定されている「法定雇用率2.7%」が何を変えるのか
を、できるだけ構造的に整理していきます。
💡この記事でわかること
この記事では、ADHDの特性を持つ人が障害者雇用を考える際に、
- 制度として「守られる」とはどういう意味か
- どこまでが期待できて、どこからは期待しすぎない方がいいのか
- 2026年以降、雇用環境がどう変わりやすいのか
を、整理してみました。
今回書いた記事で判断の材料が増えてくれればと考えています。
1.そもそも障害者雇用とは何か(制度の構造)
障害者雇用は、企業の善意で成り立っている制度ではありません。
「障害者雇用促進法」という法律に基づく、法的義務です。
一定規模以上の企業には、
- 従業員全体のうち、一定割合以上の障害者を雇用する
- その割合(法定雇用率)を満たさない場合、納付金を支払う
というルールがあります。
つまり企業にとって障害者雇用は、
- 社会貢献という側面もある一方で
- コンプライアンス(法令順守)の問題でもある
という位置づけになります。
この「経営上の義務」という性質が、
障害者雇用が完全に守られるわけでも、軽視されるわけでもない理由です。
2.ADHDの人にとってのメリット(制度面)
① 合理的配慮を求める「権利」がある
合理的配慮とは、障害の特性によって生じる不利を減らすための環境調整です。
現在は、事業者側に提供義務があります。
ADHDの場合、たとえば、
- 口頭指示ではなく、文字での指示
- 集中しやすい環境への配慮
- 通院や体調変動を前提とした勤務調整
などが、「わがまま」ではなく制度上の配慮として位置づけられます。
一般雇用では個人の努力に委ねられがちな部分を、
制度として交渉できる点は、大きな違いです。
② 解雇・雇い止めのハードルは相対的に高い
日本では、もともと解雇のハードルは高いですが、
障害者雇用の場合は、さらに行政的な手続きや指導が関わります。
「仕事が遅い」「ミスがある」といった理由だけで、
すぐに雇用を切ることは難しい構造になっています。
これは「絶対に解雇されない」という意味ではありませんが、
衝動的・感情的な判断が入りにくい仕組みであることは確かです。
③ 通院・体調管理が前提として共有されやすい
定期通院や服薬、体調の波があることが、
最初から前提として共有されやすい点も特徴です。
「説明し続けなくていい」というだけでも、
心理的な負担が下がる人は少なくありません。
3.知っておきたい限界とリスク
制度には守ってくれる側面がある一方で、
万能ではありません。
① 給与水準・契約形態の現実
障害者雇用では、
- 補助的・定型的な業務
- 契約社員・パートなどの有期雇用
が中心になる傾向があります。
責任が軽くなる分、
賃金水準や昇給・賞与は限定的になりやすい、
という現実はあります。
② 「無期転換=正社員」ではない
いわゆる「5年ルール」は、
雇用期間が無期限になる制度であって、
待遇が正社員並みに変わることを保証するものではありません。
無期雇用になっても、
- 業務内容
- 給与水準
- 昇給・評価制度
は、そのままというケースも多くあります。
③ 業務そのものが変わるリスク(AI化)
障害者雇用で多い定型業務は、
AIや自動化の影響を受けやすい分野でもあります。
「雇用枠」は維持されても、
担当していた仕事が変わる・なくなる
という可能性は、現実的なリスクとして存在します。
4.2026年7月「法定雇用率2.7%」が意味するもの
2026年7月から、法定雇用率は2.7%に引き上げられる予定です。
一見すると小さな変化ですが、
従業員数の多い企業ほど、追加で雇用すべき人数は大きくなります。
この影響で、
- 企業は「雇用率を安定して満たすこと」をより重視する
- 身体障害だけでなく、精神・発達障害の雇用も増えやすい
という流れが起きています。
特に、
- 勤怠が比較的安定している
- 基本的な業務を継続できる
人材は、企業側から見て「手放したくない存在」になりやすい時期です。
5.制度とどう付き合うかという視点
障害者雇用を選ぶかどうかは、
正解・不正解で決められるものではありません。
ただ、
- 会社に過度に期待しすぎない
- 自分を守る仕組みとして制度を理解する
という視点を持つことで、
精神的な負担が軽くなることはあります。
制度は「安心材料」にはなりますが、
人生すべてを保証するものではありません。
だからこそ、仕組みを知った上で、距離感を調整することが大切になります。
📝まとめ
障害者雇用は、
ADHDの特性による働きにくさを、
法律という枠組みで調整するための制度です。
「守られる」という言葉の中身を分解して理解することで、
過度な期待や過度な不安から、少し距離を取ることができます。
焦らず、比べすぎず、
自分にとって現実的な選択肢として、
今ある制度をどう使うかを考えてみてくださいね。
🌙 もし辛くなったり苦しくなったら。
もし、ひとりで整理するのが辛くなったり苦しくなったら、
「話す」という選択肢があることを忘れないでくださいね。
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