こんばんは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今日は、「逃げ癖」について書いてみたいと思います。
先日、30代の男性からこんなご相談がありました。
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「仕事でちょっとでもミスをすると、もうそこから頭が真っ白になって、席を立って逃げてしまうんです。
上司に報告しなきゃいけないのに、できない。
メールの返信が怖くて、何日も見られない。
自分がどうしてこんなに意志が弱いのか、情けなくて。」
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「意志が弱い」
「根性がない」
……そう自分を責めてきた方、多いのではないでしょうか。。。
でも、もしかしたらそれは、意志の問題ではないかもしれません。
ADHDという脳の特性が「逃げ癖」と深く結びついていることが、脳科学の研究で明らかになっています。
この記事でわかること
- ADHDの特性が「逃げ癖」につながるメカニズム
- 「逃げてしまう自分」を責めなくていい理由
- ADHDの特性に合った、現実的な対処のヒント
「逃げ癖」はADHDの特性と関係しているのか
結論からお伝えします
ADHDの特性を持つ方は、「逃げ癖」が出やすい脳のしくみを持っています。
これは意志の弱さではなく、脳の情報処理の特性によるものです。
ADHDの脳では、やる気や達成感に関わる神経伝達物質「ドーパミン」が必要な場所でうまく働きにくい状態にあります。
さらに、先を見通して行動をコントロールする「前頭葉」と、報酬処理に関わる「線条体」の連携がうまくいきにくいことが、ADHDの症状と深く関係していると考えられています。
その結果として、「嫌なこと」「怖いこと」「失敗しそうなこと」に直面したとき、脳が冷静に状況を分析する前に、衝動的に「その場から離れる」という行動を選んでしまいやすくなるのです。
ADHDの「3つの特性」が逃げ癖をつくる
①感情の調整が難しい
ADHDの方は、感情の波が大きく、しかもその波を「なだめる」のに時間がかかる傾向があります。
怒り、不安、恥ずかしさ、焦り——こうした感情が一気にあふれてきたとき、その場にとどまっていることが、心理的に非常に困難になります。
「逃げる」のは、その瞬間に感情の嵐をやり過ごすための、脳が選んだ緊急手段なのです。
②回避行動が習慣化しやすい
一度「逃げる→楽になる」という体験をすると、脳は「これで楽になれた」と学習してしまいます。
「嫌なことがある→逃げる→つらさが消える」というパターンが繰り返されるほど、逃げることが自動的な反応として定着していきます。
ADHDの衝動性と、即時の「楽」を求めやすい特性が重なることで、この習慣化が特に起きやすくなるのです。
③「先のことを考える力」が使いにくい
ADHDの特性のひとつに、「実行機能」の弱さがあります。
実行機能とは、先を見通して計画を立て、感情や行動をコントロールする力です。
「逃げたら後でもっと大変になる」とわかっていても、今この瞬間の苦しさのほうが圧倒的にリアルに感じられてしまう。
だから「後のことより今楽になりたい」という選択が優先されてしまうのです。
「逃げ癖がある自分」を責めなくていい理由
ここまで読んでくださった方は、もう気づいてくださっていると思います。
「逃げてしまう」のは、根性がないからでも、意志が弱いからでもありません。
感情の波を処理するのに時間がかかる脳の特性、回避を学習しやすい神経のしくみ、今この瞬間に引っ張られやすい実行機能の課題——これらが重なって起きていることなのです。
ずっと自分を責めてきたとしたら、それはとても苦しかったと思います。。。
責めることに使ってきたエネルギーを、特性を知って対処することに使い始めてほしいのです。
ADHDの特性に合った、現実的な対処のヒント
①「逃げたくなるサイン」に気づく練習をする
逃げてしまったあとで気づくのではなく、「そのひとつ前のサイン」に気づくことが大切です。
胸が締め付けられる感覚、頭が真っ白になる感覚、急に他のことをしたくなる感覚——人によってサインは違います。まず「自分の逃げ始めのサイン」を知ることが、最初の一歩です。
②「5分だけその場にいる」ルールを作る
逃げたくなったとき、「逃げない」を目標にするのは難しすぎます。
かわりに「5分だけその場にいてみる」という小さなルールを設定してみてください。
5分経ったら逃げてもいい——そう決めるだけで、衝動的な回避を少し遅らせることができます。
③信頼できる人や専門家と「脱出口」を作っておく
「困ったらここに連絡する」「この人に話す」という逃げ道を、あらかじめ作っておくことも有効です。
衝動的に「その場から消える」のではなく、「安全な場所に移動する」という選択肢を持っておくことで、回避行動の質が変わってきます。
ひとりで抱え込まなくていい
「逃げ癖があるのは自分だけ」と孤独に感じてきた方に、伝えたいことがあります。
あなたの「逃げ」には、理由があります。
そして、その理由を知り、特性に合った関わり方を見つけることで、少しずつ変わっていくことができます。
ひとりで抱え込まず、専門家に相談することも、ひとつの選択肢です。
感情の波やADHDの特性について、アプリを使ってセルフケアから始めてみたい方はこんなアプリがあります。
まとめ
「逃げ癖」とADHDの関係について、まとめます。
- ADHDの脳はドーパミンの働きや前頭葉・線条体の連携に特性があり、衝動的に回避行動を取りやすい
- 感情の調整が難しく、不快な状況でとっさに「逃げる」という行動を選びやすい
- 「逃げる→楽になる」を繰り返すことで、脳がその回避を学習・強化してしまう
- 実行機能の課題から、「後のことより今楽になりたい」という選択が優先されやすい
- 逃げ癖は意志の問題ではなく、特性への理解と対処で変えていける
「また逃げてしまった」と感じるたびに自分を責めてきた方——その繰り返しに、終わりをつくることができます。
特性を知ることが、最初の一歩です。一緒に考えていきましょう。
参考書籍
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