「暴力反対」を訴える人がなぜ暴力をふるうのか、その矛盾を心理学で読み解く

こんばんは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。

今日は20代男性からこんなご相談がありました。

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先日YouTubeを見ていたら、ある施設の前で「暴力反対」というプラカードを掲げてデモをしている人たちの動画があったんです。
でも、その人たち、その施設の職員の方に体当たりしてるんです。
「暴力反対」と書いているのに、自分は暴力をふるってもいいと思っているのでしょうか?
デモが良い悪いというより、自分の言っている事に矛盾があることに気が付いているのでしょうか?
結構こういう動画よくあって、「差別反対」と訴えている人が差別的な発言をしていたり。
訴える側は何をしてもいい、という感覚なのでしょうか。
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よくSNSも含めてこういった動画多いですよね。
今日はこの行動心理について考えてみたいと思います。

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この記事でわかること

  • 「訴えている内容」と「実際の行動」がずれてしまう心理的な仕組み
  • 集団の中にいると、なぜ個人の価値観がゆらいでしまうのか
  • 本人が矛盾に気づきにくいのはなぜなのか

なぜ「掲げる正義」と「実際の行動」はズレてしまうのか

こうした矛盾は特別な人にだけ起こるものではなく、人間の心の構造そのものに組み込まれた、ごくありふれた現象なのです。
ご相談者様が感じられた違和感は、心理学的に見ても非常に的を射たものです。
ここでは、考えられる3つの心理メカニズムを見ていきますね。

ケース1:モラル・ライセンシング(正義の免罪符化)

「自分は正しいことをしている」という強い自覚そのものが、逸脱行動への免罪符になっている可能性が考えられます。

モラル・ライセンシングとは、自分の中で「善い行い」を積んだという感覚が生まれると、その後の多少の逸脱行為に対する罪悪感が薄れてしまう心理現象です。
「暴力反対」を訴えるという行為そのものが、本人の中ではすでに大きな”善行”として処理されてしまっているのです。
そのため、その延長線上で起きる自分自身の行動については、無意識のうちに「これくらいは許される」「目的のための手段だ」と正当化されてしまうのです。
掲げる看板が大きく立派であるほど、この免罪符の効力も強くなってしまう傾向があるのです。

ケース2:内集団・外集団バイアスによる線引き

対象を「自分たちとは異なる存在」と位置づけてしまうことで、そこへの行動が”暴力”として自覚されなくなっている可能性が考えられます。

人間の心には、自分の属する集団(内集団)と、それ以外の集団(外集団)を無意識に分けて評価する働きがあります。
内集団に対しては共感や配慮のルールが強く働く一方で、外集団に対してはそのルールが緩んでしまうことが、社会心理学の研究でも示されているのです。
「暴力反対」という言葉は、あくまで自分たちの仲間内、あるいは”守るべき対象”に向けたルールであり、外集団と見なした相手には、そもそもそのルールが適用される対象として認識されていない、ということが起こり得るのです。
本人の中では矛盾ではなく、「別のルールが働く領域」として処理されてしまっているのです。

ケース3:素朴実在論と没個性化の重なり

「自分の見え方こそが客観的な真実である」という思い込みと、集団行動による自己意識の低下が重なることで、矛盾への気づきそのものが起こりにくくなっている可能性が考えられます。

素朴実在論とは、自分が世界を見たままの姿こそが唯一の真実であり、それに反対する人は「情報不足か、悪意があるか、愚かである」と捉えてしまう認知の癖です。
この状態にあると、自分の行動を客観的に振り返るという発想自体が生まれにくくなります。
さらに、大勢で行動する場面では「没個性化」と呼ばれる状態になり、個人としての自己認識や責任感が薄れ、集団の熱量に自分の行動が引っ張られやすくなるのです。
「自分は正しい側にいる」という確信と、「今の自分は一人の個人ではなく集団の一部である」という感覚が重なることで、矛盾を振り返るための心のブレーキが利きにくくなってしまうのです。

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まとめ

「訴えている内容」と「実際の行動」が食い違ってしまう背景には、正義感が免罪符に変わってしまう仕組みや、相手を”別の枠”として無意識に線引きしてしまう仕組み、そして集団の中で自己を振り返る力が弱まってしまう仕組みが重なっていることが多いのです。

これは特定の誰かが特別に矛盾している、ということではなく、条件がそろえば誰の心にも起こり得る現象なのですよね。
だからこそ、こうした心の仕組みを知っておくことは、他人の行動を見るときだけでなく、自分自身の言動を振り返るための一つの視点にもなると思います。

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