――ADHD特性をふまえた、それは「逃げ」ではなく合格のための「戦略的撤退」
✍️はじめに
こんにちは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
高校受験を控えた中学3年生の3学期。
別室登校や五月雨登校を続けてきたお子さんを持つお母さんから、この時期になると、よくいただく相談があります。
- 「2学期までは何とか別室に行けていたのに、3学期に入って『家で勉強したい』と言い出しました」
- 「受験直前だからこそ、学校に行かせた方がいいのではと迷っています」
- 「ここで休ませたら、このまま行けなくなるのではないかと不安です」
ADHD特性のあるお子さんを育てていると、
“頑張らせる判断”と“守る判断”の線引きが、とても難しくなります。
先に結論をお伝えしますね。
私は中3の3学期は、堂々と休ませていい。
それは甘やかしではなく、受験に向けた合理的な判断
と考えています。
この記事は、
私自身が親として子供に向き合ってきた経験と、
心理・発達の知見の両方を踏まえ書いています。
1.「短時間登校」でも続けたことの意味
別室登校をしている多くの子にとって、
「朝から夕方まで教室で過ごす」ことは、非常に高い負荷になります。
実際には、
- 午前10時・11時頃に登校する
- 別室で短時間過ごす
- 給食前に下校する
といった形で関わってきたご家庭も多いでしょう。
親の立場から見ると、
「こんな短時間で意味があるのだろうか」
「もっと早く行かせた方がいいのでは」
と感じてしまうのも自然です。
しかし、脳科学の視点で見ると、これは非常に理にかなった関わり方です。
脳は「量」ではなく「回数」で自己効力感を育てる
ADHD特性のある脳は、
一度に負荷を上げられると、防衛反応が働きやすくなります。
一方で、
- 行ける時間に行く
- 行ける形でいいから続ける
この繰り返しは、
「自分はできている」という感覚(自己効力感)を積み重ねていきます。
この感覚は、受験期のメンタルを支える重要な土台になります。
今まで続けてきた登校は、決して無駄にはなりません。
2.なぜ3学期は「行かなくていい」のか
では、なぜその努力を続けてきた子を、
3学期に入って「行かせない」という判断が正解になるのでしょうか。
理由はシンプルです。
目的が変わったからです。
2学期までの目的
- 「学校に通う」という「習慣をみにつける練習」をすること
- 内申点(調査書)や出席日数の確保
毎日どんな形であっても「続けた」という事実が子供に自信を持たせます。
また、それが「次もできる」という感覚を育てていきます。
そして多くの地域では、内申点は中3の2学期末までで確定します。
3学期の目的
3学期に入ってからの最優先事項は、ただ一つ。
高校入試当日に、万全の体調とメンタルで試験会場に座ること
3.3学期登校に潜む「見えにくいリスク」
この時期、別室登校の子が学校に行くことには、現実的なリスクがあります。
感染症リスク
インフルエンザやコロナなどの感染症にかかれば、
それまでの努力が一気に崩れる可能性があります。
メンタル消耗リスク
受験直前の学校は、
- 周囲の緊張感
- 成績や進路の話題
- 無意識の比較や視線
ADHD特性のある子は、こうした刺激を過剰に受け取りやすく、
行くだけで消耗してしまうことも少なくありません。
目的が「合格」である以上、
リスクの高い行動を避ける判断は、
逃げではなく「戦略」です。
4.「このまま行けなくなるのでは?」という不安について
多くのお母さんが、ここで一番強い不安を感じます。
「一度休ませたら、このまま行けなくなるのではないか」
この不安に対して、はっきり言えることがあります。
2学期までの経験は、脳に残っている
2学期まで、自分のペースで登校を続けてきた子の脳には、
- 学校に行く
- 人と関わる
- 帰ってくる
という行動の回路がすでに作られています。
今は受験勉強という別の負荷がかかっているため、
その回路を一時的に使っていないだけです。
「サボって休む」のと
「目的のために休む」のは、
脳の使われ方がまったく違います。
「受験のために家で勉強したい」と言えたなら、
それは自分の状態を把握し、選択できるようになった証拠です。
📝まとめ:親の役割は「許可」を出すこと
この時期、親ができる一番大切なことはシンプルです。
「その判断で大丈夫だよ」と、許可を出すこと
- 2学期までは、習慣化(自信をつけること)や出席日数のために戦った
- 3学期は、受検当日の点数のために戦う
戦う場所が変わっただけです。
今は、無理に動かなくていい時期。
家で静かに、力を蓄える時間です。
どうか、お母さん自身も
「間違っていない」と思ってあげてください。
🌙 もし辛くなったり苦しくなったら。
もし、ひとりで判断を抱え込むのが辛くなったら、
「話す」という選択肢があることを忘れないでくださいね。
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