こんばんは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
最近、SNSなどでもADHDについて目にする機会が増えましたよね。
こうして広く知られるようになることは、私も含め、当事者やそのご家族にとって、とても心強いことだと感じています。
今日は、そんな中でいただいた、こんなご相談を取り上げたいと思います。
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子供がADHDの診断を受けたんです。
それでお医者さんから薬をすすめられたんです。
「考えさせてください」といって帰ってきたのですが。。。
まだ子供は小学生ですし、薬の影響が何かあると怖いと思ってしまうんです。
こんなに若いときから薬を飲まないといけない生活なんて、本当にいいのだろうか?と悩んでしまうんです。
でも、薬を飲むことによって子供が少しでも普通の子と同じように過ごせたら、子供も嬉しいのかな?と思ったり、私も悩むことが減るのかな?って思ったり。
みなさんは薬どうされているのでしょうか?
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お子さんの将来を思うからこそ、簡単には決められないお気持ち、痛いほどわかりますよね。
今日は、この悩みに向き合うために、実際の研究データをもとに、できるだけ客観的な視点をお届けしたいと思います。
この記事でわかること
- ADHDの薬が、統計的にどれくらい効果があるとされているのか
- 薬の種類によって、効果と副作用のバランスがどう違うのか
- 薬を検討するときに、判断材料として押さえておきたい視点
ADHDの薬は、統計的にどれくらい効果があるのでしょうか
結論からお伝えすると、現在日本で使われている主なADHD治療薬は、いずれもプラセボ(偽薬)と比べて明確な効果があることが、大規模な研究で示されているのです。
2018年に医学誌「ランセット・サイキアトリー」で発表された研究では、世界中で行われた133件の二重盲検ランダム化比較試験を統合し、ADHDのある子ども14,346人と大人10,296人のデータをもとに、治療薬の効果と副作用が比較されています。
このように多くの研究を一つにまとめて分析する方法は「メタ解析」と呼ばれ、一つひとつの研究だけではわかりにくい、より信頼性の高い結論を導き出すことができる手法なのです。
この研究では、医師など専門職が子供の症状を評価した場合、コンサータ(メチルフェニデート)、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)、ビバンセ(アンフェタミン類)のいずれについても、プラセボと比べて症状の改善が確認されているのです。
一方で、興味深いのは、学校の先生が評価した場合の結果です。
病院では効果がはっきりしていても、学校という別の環境で見ると、薬によっては効果がやや不明瞭になるケースもあることがわかっているのです。診察室で落ち着いて見えるお子さんが、学校では違う様子を見せることは、実際の臨床でもよくあることなのですよね。
薬によって、効果と副作用のバランスは違うのです
ここで大切なのは、「効果があるかどうか」だけでなく、「副作用とのバランスがどうか」という視点なのです。
先ほどの研究では、副作用によって薬の服用を中止した人の割合についても調べられています。
その結果、子供のケースでは、コンサータやストラテラは、プラセボと比べて中止率に明確な差が見られなかった一方で、ビバンセやインチュニブは、比較的中止されやすい傾向が見られたのです。
つまり、大まかに整理すると次のような特徴が見えてくるのです。
- コンサータ:効果と副作用のバランスが比較的良いとされる
- ビバンセ:効果は高いが、副作用による中止もやや多い
- ストラテラ:効果は穏やかだが、副作用も比較的少ない
- インチュニブ:効果は控えめで、副作用による中止がやや多い
ただし、これはあくまで統計的な傾向であり、実際にどの薬が合うかは、お子さん一人ひとりの体質や状態によって大きく異なるものなのです。
この研究データも、服薬開始から12週間という比較的短い期間をもとにしたものであり、長期的な影響を判断する材料としては限界があることも、あわせて知っておいていただきたいのです。
薬を検討するときに、大切にしたい視点
ご相談者様のように、「薬を飲むことで普通の子と同じように過ごせるのなら」というお気持ちは、とても自然なものなのです。同時に、「若いうちから薬に頼る生活でいいのか」という迷いも、どちらも子供を思う気持ちから生まれているのですよね。
ここで一つお伝えしたいのは、薬物療法は「治すための薬」ではなく、「特性による困りごとを和らげるための選択肢の一つ」だということなのです。多くのガイドラインでは、環境調整や行動面へのサポートを土台にしながら、それでも困りごとが大きい場合に薬物療法を検討する、という考え方が示されています。
つまり、薬を飲むか飲まないかは、白か黒かで決める話ではなく、お子さんの困りごとの大きさや、生活への影響の程度を見ながら、医師と一緒に調整していくものなのです。今すぐ結論を出さなくても、様子を見ながら考えていくという選択も、十分にあり得るのです。
そして何より、悩みながらも情報を集め、お子さんにとって何が良いかを真剣に考えていること自体が、すでに十分な子育てだと、わたしは思うのです。
🌿 今日のまとめ
ADHDの薬物療法は、統計的にはプラセボと比べて効果が確認されているものの、薬の種類によって効果と副作用のバランスは異なり、また個人差も大きいものなのです。
大切なのは、正解を急いで一人で決めようとしないことです。データを一つの参考にしながら、担当の医師とよく相談し、お子さんの様子を見ながら少しずつ答えを見つけていっていただけたらと思います。
参考文献
- Cortese S, Adamo N, Del Giovane C, et al. Comparative efficacy and tolerability of medications for attention-deficit hyperactivity disorder in children, adolescents, and adults: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry. 2018;5:727-738.(薬の効果・副作用に関する統計データの一次資料)
- 金沢大学こどもの心の診療科「ADHD治療薬、どれが効いてどれが安全?」note(上記論文の解説記事。副作用による中止率の傾向についての解釈を一部参考)
- 一般社団法人 日本小児神経学会「Q69:注意欠如・多動症(ADHD)にはどの様な治療法がありますか?」(心理社会的治療と薬物療法の位置づけについて)
