こんばんは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
先日、電話相談でこんなことがありました。
ご相談をいただいたのはご年配の男性の方です。
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「パソコンの使い方がわからないから教えてくれ」
というご相談です。
それもメールの設定方法を教えてほしいとのこと。
私は、たしかにどんな内容のご相談でもお受けしていますが、その前提には「心の問題」があります。
パソコンの操作方法は専門外なので、専門の窓口をご案内しました。
けれど、そのご老人は、それでは納得してくださらなかったのです。
無理なことはご本人もわかっていらっしゃるはずなのに、「なんとかしろ」とおっしゃるのです。
わかることなら、いくらでもお教えできます。
けれど、わからないことは、残念ながらわかりません。
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このやりとりのあと、私はふと思いました。
これは決して他人事ではない、私も数年後には同じようになっているかもしれません。
なぜ、ご高齢の方は「無理だとわかっていること」まで、あんなに食い下がるのでしょうか。
この記事でわかること
- 専門外のことにまで「なんとかしてほしい」と食い下がる心理的な背景
- その行動の奥にある「喪失への恐れ」と「コントロール感の希求」
- 「明日は我が身」と感じたときに、今からできる心の準備
この行動=「コントロール感を取り戻したい」という心理
結論から申し上げますと、あの食い下がりは「わからせてやる」という攻撃ではなく、「自分の手に、もう一度、状況を取り戻したい」という願いなのです。
加齢とともに、人はさまざまな喪失を経験します。
体力の低下、視力や聴力の衰え、社会的な役割の減少……。
ひとつひとつは小さくても、それが積み重なると、「自分の力で物事をコントロールできている」という感覚、心理学でいう自己効力感が、少しずつ削られていくのです。
パソコンという、若い世代には当たり前の道具が使えないという事実は、そうした喪失感を強く刺激します。
だからこそ、目の前の電話相談員に「なんとかしろ」と迫ることで、失われかけたコントロール感を、一時的にでも取り戻そうとしているのです。
この行動=「頼れる相手を手放したくない」という心理(見捨てられ不安)
ふたつめの理由は、見捨てられることへの不安です。
電話相談という窓口は、そのご老人にとって、数少ない「話を聞いてもらえる相手」だったのかもしれません。
専門外だからと案内をすることは、私たちにとっては当然の対応でも、相談者にとっては「また、ひとりで放り出されるかもしれない」という不安を呼び起こすことがあるのです。
だからこそ、話をすり替えてでも、目の前の相手にしがみつこうとする。
これは、頼れる人間関係が乏しくなっていくご高齢期特有の孤独感が、行動としてあらわれたものだと考えられるのです。
この行動=「できない自分を認めたくない」という防衛(否認)
三つめは、心理学でいう「否認」という防衛機制です。
「わからない」「できない」という事実を、そのまま受け入れることは、誰にとってもつらいものです。
とくに、これまで社会の中で役割を担い、誰かに頼られてきた世代にとっては、なおのことでしょう。
「教えてくれれば、わかるはずだ」「なんとかできるはずだ」と主張し続けることは、「自分にはもう無理なのだ」という現実を、心の奥でまだ受け止めきれていないサインなのです。
これは弱さではなく、これまで懸命に生きてこられた証でもあるのです。
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まとめ
あのご老人の食い下がりは、わがままでも、頑固さだけの問題でもなかったのです。
喪失への恐れ、見捨てられることへの不安、そして「できない自分」を認めきれない心。
そのすべてが、あの一言に詰まっていたのだと、今なら思います。
そしてそれは、今の私たちにとっても、決して遠い話ではありません。
年齢を重ねるということは、誰にとっても、少しずつ何かを手放していく過程でもあるのです。
だからこそ、今のうちから「わからないことは、わからないと言える自分」「頼れる先を複数持っておく自分」を育てておくことが、未来の安心につながっていくのです。
行動の奥にある心理を知ることは、相手を理解する力になるだけでなく、いつか自分自身を理解する力にもなっていくものだと今回の件で強く思いました。
もしなにかおもう事や考える事があればいつでもご相談くださいね。