― 主流薬の選び方・注意点・登録制(コンサータ/ビバンセ)のポイントまで ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
この記事では、**発達障害(神経発達症群)**のうち「薬物療法(やくぶつりょうほう)」に焦点を当て、**2025年時点での主流薬の位置づけ・使い分け・副作用への向き合い方・日本での登録制(コンサータ/ビバンセ)**など、現場でほんとうに必要な“ポイント”までまとめます。
先に大事な前提
- 発達障害そのものを「治す薬」は、まだ存在しません。
- 薬は困りごと(症状)を軽くする補助です。
- 生活調整・環境調整・心理社会的支援が土台。薬は上に積む部品と考えるのが安全です。
🧭 この記事の読みどころ
- ADHD:刺激薬/非刺激薬の違いと選び方
- ASD:コア症状ではなく“併存(けいそん)症状”への薬物療法
- 日本の登録制(流通管理):コンサータ・ビバンセの**「医師/薬局/患者」登録**と、変更手続きの要点
- 安全に使うためのメモ:副作用モニタリング、やめ方、紛失時、転院時の注意
- 最新トピック:非刺激薬の拡充、海外の新薬動向(ビロキサジン、センタナファジン ほか)
🧠 ADHD(注意欠如・多動症)に使われる主流薬
1) 刺激薬(しげきやく):“速効性”と“効果の強さ”が特長
- メチルフェニデート徐放(コンサータ)
- 作用:注意・実行機能の底上げ、衝動の抑制
- 速さ:服用後およそ30〜60分で立ち上がり
- 副作用:不眠・食欲低下・緊張感上昇・動悸など
- 日本では登録制(後述):登録医師・登録医療機関・登録薬局のみで処方調剤。未登録の薬局では基本的に調剤不可。PMDA
- リスデキサンフェタミン(ビバンセ)
- 作用:1日持続しやすい“プロドラッグ型”刺激薬
- 特徴:朝1回で日中をカバーしやすい
- 副作用:不眠・食欲低下・口渇・不安感など
- 厳格管理:有効成分が覚醒剤原料に指定。ADHD適正流通管理システムに登録された医師・薬局・患者のみが対象(後述)。JAPIC Pins
📝 刺激薬は効くが合う人を選ぶ。食欲・睡眠・不安の揺れは丁寧にモニターを。子どもでは**成長(身長・体重)**のフォローが基本。
2) 非刺激薬:“じわっと効く”“依存性が低い”
- アトモキセチン(ストラテラ)
- 作用:ノルアドレナリン再取り込み阻害
- 立ち上がり:効果実感まで2〜4週間
- 強み:睡眠に優しい例が多い、チック合併でも使いやすい
- 日本で2009年承認。CareNet.com+1
- グアンファシン徐放(インチュニブ)
- 作用:α2A受容体作動(前頭前野のネットワーク安定化)
- 強み:衝動性/易怒(いど)/情動のゆらぎの改善に相性がよい
- 注意:眠気・血圧低下に留意(夜間服用の設計が多い)
- 日本で2017年承認。塩野義製薬
📝 非刺激薬は刺激薬が合わない/不安や睡眠の副作用が強いケースで第一選択になることがある。安定までゆっくり待つのがコツ。
🌈 ASD(自閉スペクトラム症)と薬の位置づけ
ASDのコア症状(社会的コミュニケーション特性・こだわり)を直接改善する標準薬は未確立です。薬は、併存症状(不安・易刺激性・睡眠・注意の散りやすさ など)に対して使います。
- 不安・抑うつ:SSRI/抗不安薬(慎重投与)
- 易刺激性・攻撃性:アリピプラゾール等の抗精神病薬の低用量
- 睡眠:メラトニン、デュアル作動型睡眠薬(個別化)
- 注意・衝動:ADHD薬の併用を検討(個別評価)
📝 ASDでは行動・教育的支援が主軸。薬は**“安心の土台づくり”の補助**として位置づけるのが安全です。
🧩 日本特有の登録制(流通管理)
対象薬と趣旨
日本では乱用・不正流通リスクに対処するため、以下の薬にADHD適正流通管理システム(製薬企業と第三者委員会が運用)が導入されています。
- コンサータ(メチルフェニデート徐放)
- ビバンセ(リスデキサンフェタミン) ※有効成分は覚醒剤原料に指定。PMDA+1
登録の“3者セット”
- 医師・医療機関の登録
- 薬局・薬剤師の登録
- 患者の登録(ビバンセは患者登録必須)
→ いずれかが未登録だと、処方・調剤できません。PMDA+1
受診先/薬局を変えるときの注意
- 医師を変える/薬局を変える場合、**登録情報の更新(切替)**が必要。
- 登録の切替が済むまで処方や調剤が止まることがあります。転院や引っ越し時は早めの段取りが安心。
- 「登録薬局」以外では在庫を置けない/発注できないため、旅行・帰省前に日数調整を(主治医に相談)。PMDA
紛失・盗難・過量の自己調整はNG
- 紛失・盗難時は即連絡(主治医/薬局)。再交付は厳格に判断。
- 自己判断での増減量は不可。特に刺激薬は急な増減でリバウンドや不眠・不安が悪化することがあります。
- **受け取りは本人(法定代理人)**が原則。代理受取は薬局の指示に従ってください(本人確認が求められます)。
参考:制度の根拠文書(PMDA/審査報告・流通管理基準)。登録医師・薬局限定、患者登録の運用が明記されています。PMDA+2PMDA+2
🛠️ ポイント:処方を安定運用するために
- “1つの医療機関+1つの薬局”を基本線に
- 登録制薬は**“かかりつけ薬局”の固定化がポイント。急な変更は在庫・登録切替**で詰まりがち。
- スケジュール管理を前倒しで
- 長期休暇・試験・出張の前に服薬日数と次回受診日を主治医と調整。
- 副作用メモを持参
- 食欲・体重・睡眠・血圧・心拍・気分の波を箇条書きで。
- 子どもは身長体重曲線をノートに貼っておくと早い。
- やめるときは“段階的減量”
- 特に刺激薬をいきなり中止は避ける。週単位での**漸減(ぜんげん)**を医師と計画。
- ほかの薬・サプリと相互作用に注意
- 風邪薬の一部成分(交感神経刺激)や、SSRI等との組合せで不眠・焦燥が強まることがあります。自己判断せず、受診時に申告を。
🧪 海外の新顔・アップデート
- ビロキサジン徐放(Qelbree):非刺激薬。米国で小児→成人まで適応が拡大。日本未承認。薬事.com
- センタナファジン(Centanafadine):ノルアドレナリン/ドパミン/セロトニンの“三重”再取り込み阻害。海外第3相の長期成績が報告され、承認申請動向が注目(国内未承認)。academia.carenet.com
海外情報は日本の承認条件と異なることが多い点に注意。導入の際は国内ガイドとPMDA情報を必ず確認しましょう。
🧩 よくある質問(FAQ)
Q1. まず何から始めればいい?
A. 睡眠・生活リズム・学習(仕事)環境の調整を整えながら、薬は**“必要な期間だけ”“必要な用量で”。初回は少量から**が基本です。
Q2. コンサータとビバンセの違いは?
A. いずれも刺激薬ですが、体感・持続・副作用が異なります。1日中の持続や朝の立ち上がりは個人差が大きく、試行的な用量調整で最適解を探します(登録制はどちらも必要)。PMDA+1
Q3. 薬局で断られた/取り寄せと言われた
A. 登録薬局かどうか、在庫状況、患者登録の切替が済んでいるかを確認。旅行先での受け取りは難しいため、前倒し受診で調整しましょう。PMDA
Q4. 学校・職場に伝えるべき?
A. 必要な範囲で事実のみを共有(眠気・食欲低下・再診スケジュールなど)。合理的配慮(ごうりてきはいりょ)につなげる資料として、主治医の情報提供書が役立ちます。
🌿 まとめ:薬は“暮らしを助ける道具”
- ADHDでは刺激薬/非刺激薬それぞれの強みを理解し、生活調整とセットで使う。
- ASDでは併存症状へのアプローチが中心。行動・教育的支援が主軸。
- 日本ではコンサータ/ビバンセが登録制。医師・薬局・患者の登録と手続きの段取りがカギ。PMDA+1
- 副作用は“見つけ次第、記録・相談”。やめ方も計画的に。
- 海外新薬の情報は魅力的でも、国内の承認条件とガイドを必ず確認。
焦らず、あなたの暮らしが楽になる方向へ。
薬は、あなたの力を引き出すための補助輪です。
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→個別回答は行っておりませんが、ご回答できるものに関してはブログで回答します。

