― 学校での孤立・ストレス・涙の裏にある心のサイン ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、40代のお母さんから寄せられたご相談をご紹介します。
娘さんが学校でお友達との関係に悩み、
最近では一人でいることが多くなり、
指の皮をむしってしまうなど、ストレスが強まっている様子が見られる――
という内容です。
💬 ご相談内容
中学生の娘がいます。
最近、学校での友達関係に悩んでいるようです。
何が原因なのかはわかりませんが、話を聞いていると
お友達たちから距離をおかれているような印象を受けます。
学校では一人でいることが多く、
「一人でいるのがつらい」「学校に行きたくない」と言っています。
また、ストレスが強くなると指の皮をむしってしまうようで、
以前も同じようなことがありました。
最近では家でも泣いているようですが、私には見せないようにしています。
通学について学校と相談しようかと思っていますが、
娘は「担任の先生に話すと余計にややこしくなる」と嫌がります。
カウンセラーにも話しているようですが、あまり効果を感じていないようです。
日常生活の中で、親として何かしてあげられることはないでしょうか?
🧠 回答:「話すこと」よりも「安心を取り戻すこと」から始めよう
このご相談、とても深いテーマです。
学校での人間関係に悩む思春期の子どもにとって、
「誰にも助けを求められない」状況ほどつらいことはありません。
娘さんの「一人でいるのがつらい」「泣いてしまう」「皮をむしってしまう」――
これらは、心がSOSを出しているサインです。
けれど、本人にとっては「助けて」と言うことさえ怖い。
だからこそ、親ができることは“解決を急ぐ”よりも、
安心を取り戻すための環境を整えることです。
🌿 まず理解しておきたい「心のメカニズム」
① 「孤立」は“人との断絶”ではなく、“心の疲労”
孤立している子どもに対して、
「友達をつくればいい」「話しかければいい」と言うのは逆効果になることがあります。
彼女たちは“関わりたい”気持ちを持っていても、
人と関わることに疲れ切っている状態なのです。
学校という環境では、
言葉や表情、空気の読み取りなど、
常に高度なコミュニケーションを求められます。
その負荷が続くと、
「もう誰とも関わりたくない」という心の防衛反応が出てきます。
② 「指の皮をむしる」行動の背景
これは、医学的には「皮膚むしり症(スキンピッキング)」と呼ばれる行動に近く、
**ストレスや不安を抑えるための自己刺激行動(セルフスティミュレーション)**の一種です。
本人にとっては「落ち着くための行動」であり、
「やめなさい」と言われてもやめられないことがほとんどです。
つまり、叱るよりも、
「今つらいんだね」「そうやって落ち着こうとしているんだね」と
理解を示すことが第一歩になります。
③ 「泣く」=「弱さ」ではない
家で泣くのは、外で我慢している証拠です。
涙は、心の中の「抑えてきた感情」が出てくる自然な反応で、
むしろ“心が壊れていない”というサインでもあります。
「泣いてもいい」「つらいって言っていい」
そう思える環境を家で作ることが、最大の支援になります。
🌼 家庭でできる日常的なサポート方法
🌸 1. 「どうしたの?」ではなく「そっと寄り添う」
帰宅した娘さんに「今日はどうだった?」と聞くと、
その質問自体がプレッシャーになることがあります。
まずは、
「おかえり」
「がんばってきたね」
とだけ声をかけましょう。
**言葉よりも“空気の安全”**を感じさせることが、最初の支援です。
☕ 2. 「話したくなったら聞くね」というスタンス
「話してほしい」と焦ると、
子どもは“話さなきゃ”と感じてしまいます。
そうではなく、
「話したくなったら聞かせてね」
「いつでも聞くよ」
と伝えておきましょう。
この“逃げ道”があることで、
心が落ち着いたときに自分から話してくれるようになります。
🌙 3. 「安心できる時間」を一日一回つくる
- 一緒にご飯を作る
- 犬と散歩をする
- テレビを見ながら笑う
どんな形でもいいので、
**“問題と関係のない時間”**を共有することが大切です。
人間の心は、安心を感じる時間が長くなるほど、
ストレスからの回復力(レジリエンス)が高まります。
🌱 4. 「皮をむしる」行動を代替行動に変える
皮膚を傷つけてしまう行動には、
“落ち着きたい”という意図が隠れています。
それを別の形で満たす工夫をしてみましょう。
例:
- 指先で触れる小さなストレスボールを持たせる
- 小さなぬいぐるみや布を触る習慣を作る
- 手を温める/冷やすなどの感覚刺激を使う
「やめさせる」のではなく、
「他の方法でも落ち着ける体験」を増やすことが目的です。
🕊️ 5. 「学校に行かない日」を“学びの一部”にする
学校に行けない日は、
「休んでしまった」ではなく「回復の日」として受け止めましょう。
一日ゆっくりして元気を取り戻せたなら、
それは立派な“成長の時間”です。
子どもは、「休める」とわかることで、
次にまた「がんばってみよう」と思えるようになります。
🧩 学校との関係づくりのヒント
娘さんが「先生に話すと余計に悪化する」と感じているとき、
直接的な介入はかえって逆効果になることがあります。
この場合は、
「先生に全部話す」のではなく、
**“伝えておきたいことだけを簡潔に共有する”**方法が有効です。
たとえば:
- 「最近、少し疲れやすい様子がある」
- 「無理をせずに過ごせるよう配慮してほしい」
これくらいの伝え方で十分です。
“何が起きているか”より、“どう配慮してほしいか”に焦点をあてます。
🧠 心理学的にみる「孤立と回復」
思春期の孤立は、
「社会的自立の準備段階」でもあります。
自分と他人の違いを意識しはじめ、
「私はどう見られているのか?」
「自分の居場所はどこか?」と悩む時期です。
この時期の支え方は、
**「導く」より「信じる」**が基本です。
親が“信頼できる存在”として横に立っているだけで、
子どもの心は確実に回復していきます。
☀️ 親が心に留めておきたい3つのこと
① 「泣くこと」は回復のサイン
涙を流せるというのは、
感情を表現できているということ。
泣けなくなったときこそ注意が必要です。
② 「支える」=「治す」ではない
親が子どもの心を“治す”ことはできません。
けれど、“支える”ことは誰にでもできます。
「あなたのことを信じている」という姿勢が、
何よりの薬になります。
③ 「親も休んでいい」
お母さん自身も、
「どうしてあげればいいのかわからない」というつらさを抱えています。
支える側が疲れ切ってしまうと、
子どもも安心できません。
たまには、
深呼吸して、好きな音楽を聴いて、
“親としてではなく一人の人として休む時間”を持ちましょう。
🌸 まとめ
- 孤立や涙、皮むしりは「心がSOSを出している」サイン。
- 話を“聞き出す”より“安心の空気を作る”ことが大切。
- 「やめなさい」ではなく「落ち着ける別の方法」を探す。
- 学校との連携は、焦らず“必要最低限の共有”から。
- 「泣ける」「休める」「安心できる」ことが回復の第一歩。
💗 読者へのメッセージ
子どもの涙を見ると、
「なんとかしてあげたい」と思うのが親の自然な気持ちです。
でも、支えるというのは、
“問題を解決すること”ではなく、
**“その気持ちを一緒に受け止めること”**です。
焦らず、急がず、
「今日一日が少しでも安心であること」。
それが積み重なっていけば、必ず光が見えてきます。
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