― 思春期の交友とネット時代の安全教育 ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、40代のシングルマザーの方から寄せられたご相談をご紹介します。
思春期の子どもが、ネットで知り合った友達と実際に会いたい・遊びに行きたいと言い出す――
スマホやSNSが当たり前の時代、
多くの親御さんが同じような不安を抱えています。
💬 ご相談内容
娘が、ネットで知り合ったお友達と遊びに行きたいと言っています。
ただ、話を聞くと
・帰りの時間が23時ごろになる
・場所が遠方(電車で2時間ほど)
・一緒に行くのは男の子も女の子もいて、年齢は中学生から20代前半くらいまでの5〜6人
ネットで知り合うのは今の時代の流れかもしれませんが、
素性のわからない人たちであることや、
遠方で何かあったときに助けに行けないことも心配です。
「やめなさい」と強く言うのは簡単ですが、
これから先の時代を考えると、どのように対応すれば良いのか迷っています。
🧠 回答:思春期の「ネット交友」は、禁止より「安全教育」へ
このご相談、とてもよくわかります。
「ネットで出会う」という文化はもはや特別なものではなく、
Z世代・α世代にとっては**“普通の交流手段”**になっています。
一方で、親世代にとっては「危険」と感じる要素が多く、
その価値観のギャップが親子の衝突を生むこともあります。
大切なのは、「行っていい・行けない」という二択ではなく、
**“安全な判断を学ばせる機会”**として捉えることです。
🌿 思春期の子が「ネットの友達」を信じやすい理由
心理学的に見ると、思春期の子どもは
「所属欲求(しょぞくよっきゅう)」と「自己開示欲求(じここうじよっきゅう)」が最も強い時期です。
現実の学校では「自分を出せない」子ほど、
ネット上では本音を語りやすく、
「わかってくれる人がいる」と感じやすいのです。
しかし、ネット上の関係は情報が限られるため、
相手を**“自分の理想像で補ってしまう”**傾向があります。
つまり、本人に悪気がなくても「信頼していい相手か」を判断する力がまだ育ちきっていないのです。
💬 「行かせない」ではなく「一緒に考える」姿勢を
強く止めると、「親はわかってくれない」と反発を招きます。
逆に、全面的に許可すると、子どもが危険にさらされる可能性も。
そのため、最初のステップとして、**“安全を一緒に検討する時間”**を作りましょう。
🗣️ ① 「どんな人たちなのか」を具体的に聞く
- どういうきっかけで知り合ったのか
- グループの中で誰とよく話すのか
- これまでどんな話題で盛り上がったのか
- 実際に会うときの集合場所・時間・帰り方
この質問は「取り調べ」ではなく、
**“安全計画の確認”**として伝えることが大切です。
「危ないからダメ」ではなく、
「安全のために一緒に整理しようね」という姿勢で話すと、
子どもも聞き入れやすくなります。
🚦 ② 「現実的な危険性」を共有する
ネット上の関係は、相手の年齢・目的・性別・立場が不確かです。
実際、警察庁の統計(2024年)によると、
SNSを通じて知り合った未成年が事件やトラブルに巻き込まれた件数は
年間3,000件を超えています。
その中には、**“友達として会っただけ”**のケースも含まれています。
「あなたが悪いからじゃなくて、
世の中には“悪意を持つ大人”が一定数いるんだよ」と伝えることが重要です。
🕊️ ③ 「行く・行かない」より先に“条件を決める”
たとえば――
- 行くなら必ず誰と行くのか明確にする
- 現地での移動や帰りの方法を親に共有
- グループLINEや連絡先を親も確認しておく
- 帰宅時間は夜ではなく明るいうちに設定
これらは「信用していないから確認する」ではなく、
「守るための約束」として話します。
🎒 「遠方」「夜」「年齢差」が重なるときのリスク
心理的に見ると、子どもは“仲間意識”が強くなると、
集団の中で判断が鈍る傾向があります。
とくに、年上が混ざるグループでは、
「自分だけ帰るのは悪い」「流れに合わせなきゃ」と感じやすくなります。
これは「同調圧力(どうちょうあつりょく)」と呼ばれるもので、
発達心理学では思春期特有の社会的傾向として知られています。
親としては、
「遠方で夜まで」という複数のリスク要素がある場合は、
“現地集合・現地解散”を認めない判断も正当です。
「行ってはいけない」と突き放すのではなく、
「安全が確保できる条件なら考えよう」と冷静に伝えるのが良いでしょう。
☀️ 安全教育として伝えておきたい3つの視点
💡 1️⃣ 「ネット=現実の延長」であること
「ネットは別世界ではなく、現実社会の一部」
この認識を育てることが、最も効果的な防止策です。
SNSでの言葉や約束、写真のやり取りもすべて“現実の行動”と同じ責任があることを教えます。
📱 2️⃣ 「個人情報」を守る習慣
- 本名・住所・学校名・制服姿の写真を載せない
- オンラインで送った画像は消せない
- 自分が撮った写真の位置情報にも注意
これは脅すためではなく、**「自分の世界を守る技術」**として教えます。
👥 3️⃣ 「もし怖いことがあったら、すぐに言える関係を」
何かあったときに報告できる親子関係をつくることが、
最も大切な“予防”です。
「もし怖いことがあったら、怒らないから教えてね」
この一言が、子どもの行動範囲を広げる“安全網”になります。
☕ 親としてできる3つの支援
🌼 ① 「世代のギャップ」を埋める姿勢
親が「昔はそんなことなかった」と言っても、
今の子どもたちはオンラインが前提の社会を生きています。
否定ではなく、理解から始める姿勢を持つと、
子どもは「話してもいい」と感じるようになります。
🪴 ② 「代替の経験」を一緒に作る
遠方や夜間で危険な場合でも、
「友達と会いたい」という欲求を否定せず、
- 近場で会う機会を提案
- 昼間に会える場所を一緒に探す
など、安全な代替案を提示してあげましょう。
🌙 ③ 「信頼している」ことを言葉にする
「あなたを心配している=信頼していない」ではありません。
むしろ、「信頼しているからこそ、安心して楽しんでほしい」と伝えることで、
子どもは「自分も安全を考える立場」になれます。
🌸 まとめ
- ネットの交友は時代の流れだが、リスクも存在する。
- 「行く・行かない」ではなく、「安全に行くための条件」を話し合う。
- 「遠方・夜・年齢差がある」場合は、親の制止は正当。
- 禁止ではなく、安全教育として対話を重ねる。
- 親が信頼を示すことで、子ども自身の判断力が育つ。
💗 読者へのメッセージ
「うちの子に限って大丈夫」でもなく、
「全部ダメ」と決めつける必要もありません。
大切なのは、「信頼」と「安全」を両立させること」。
お子さんが安心して世界を広げられるように、
親として“見守りながら学ばせる”というバランスを心がけていきましょう。
あなたのその思いやりと慎重さは、
お子さんの未来を守る大切な力です。
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