こんにちは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。
この記事では、中学1年生以上で習うむずかしい漢字(かんじ)にフリガナをつけています。
それは、私自身がLD(学習障害〈がくしゅうしょうがい〉)を持っていて、読めない漢字があるとそこで止まってしまい、次の文に進めなかった経験があったからです。
「読みやすい工夫」があれば、誰もが安心して学べると私は考えています。
だから、このブログでは専門的な内容でも、できるだけやさしく、ていねいに伝えることを心がけています。
「発達障害(はったつしょうがい)」ってなに?
発達障害とは、**生まれつきの脳(のう)のはたらき方の特性(とくせい)**のことを言います。
これは、努力不足(どりょくぶそく)や育て方の問題(もんだい)ではありません。
医学(いがく)では、アメリカ精神医学会(せいしんいがっかい)が出している DSM-5(ディーエスエム・ファイブ) や、世界保健機関(せかいほけんきかん:WHO)が出している ICD-11(アイシーディー・イレブン) という国際的(こくさいてき)な基準(きじゅん)で定義(ていぎ)されています。
DSM-5での発達障害(神経発達症群:しんけいはったつしょうぐん)
DSM-5(2013年)では「神経発達症群(しんけいはったつしょうぐん)」というグループにまとめられています。ここには次のような診断名(しんだんめい)がふくまれます。
1. 知的能力障害(ちてきのうりょくしょうがい)
知的な発達に遅れが見られ、学習(がくしゅう)や日常生活(にちじょうせいかつ)にサポートが必要になることがあります。
- 学校の勉強がとても難しい
- 計算や文字の理解に時間がかかる
- 一人での生活にサポートが必要な場合もある
ただし、できること・得意なことを伸ばすことで、自分らしく生活している人も多くいます。
2. 自閉(じへい)スペクトラム症(しょう)〈ASD〉
人とのコミュニケーションや関係づくりが苦手なことが多く、強いこだわりや感覚の敏感さがあるのが特徴です。
- 会話のやりとりがぎこちない
- 冗談(じょうだん)やあいまいな表現を理解しにくい
- 決まった手順(てじゅん)やルールを変えられると強い不安を感じる
- 音や光、においに敏感(びんかん)なことがある
一方で、好きなことに集中する力や、細かいことに気づく力を発揮できる場合もあります。
3. 注意欠如(ちゅういけつじょ)・多動症(たどうしょう)〈ADHD〉
集中力を続けることや、気持ちのコントロールがむずかしいことが特徴です。
- 忘れ物が多い
- 授業中にじっとしているのがつらい
- 話を最後まで聞く前に動いてしまう
- 片づけや順序立てた行動が苦手
ただし、興味のあることには驚くほど集中する力(ハイパーフォーカス)を発揮する人もいます。
4. 限局性学習症(げんきょくせいがくしゅうしょう)〈LD〉
読み・書き・計算などの一部の学習(がくしゅう)がとても苦手なのが特徴です。
- 文字を読むのに時間がかかる(読字障害〈ディスレクシア〉)
- 書くときに文字がうまく思い出せない(書字表出障害)
- 計算や数字の理解が難しい(算数障害)
ただし、他の分野では平均的、あるいはとても得意な力を持っていることも多くあります。
5. コミュニケーション症群(しょうぐん)
言葉の発達や使い方に特徴があるグループです。
- 言語症(げんごしょう):ことばを理解したり使ったりするのが苦手
- 発達性発語症(はったつせいはつごしょう):発音がうまくできず、ことばが聞き取りにくい
小さいころから言葉の遅れや会話のぎこちなさが見られる場合があります。サポートを受けることで改善(かいぜん)していくこともあります。
6. 運動症群(うんどうしょうぐん)
体の動きをコントロールする力に特徴があります。
- 発達性協調運動症(はったつせいきょうちょううんどうしょう):ボール遊びやハサミの使用など、動きがぎこちない
- チック症(しょう):まばたきや首を振るなどの動きをくり返す、声を出す
周囲から「不器用(ぶきよう)」と見られることもありますが、練習や工夫で生活に支障が少なくなることもあります。
ICD-11での位置づけ
WHOのICD-11(2022年から国際的(こくさいてき)に使用(しよう))でも、「神経発達症群(しんけいはったつしょうぐん)(6A00〜6A0Z)」 という名前でまとめられています。
内容(ないよう)はDSM-5とほぼ同じで、国際的(こくさいてき)に診断名(しんだんめい)を統一(とういつ)するための基準(きじゅん)です。
よくある誤解(ごかい)
- **「発達障害=ADHD」**ではありません。
→ 発達障害という大きなグループの中に、ADHDがふくまれています。 - **「発達障害=知能(ちのう)が低い」**わけではありません。
→ 知的能力に影響(えいきょう)がないタイプも多くあります。 - **「大人には関係ない」**と思われがちですが、発達障害は一生にわたる特性です。サポートの仕方や環境(かんきょう)を工夫することで、大人になってからも力を発揮できます。
まとめ
- 発達障害はひとつの病気の名前ではなく、いくつかの診断名(しんだんめい)のまとまりです。
- ADHD、ASD、LD以外にも、言語(げんご)や運動(うんどう)の発達に関するものがふくまれます。
- それぞれに苦手さや困難がありますが、同時に得意な力や可能性を持っている人もたくさんいます。
- 正確(せいかく)な定義(ていぎ)はDSM-5やICD-11に書かれています。
発達障害の理解はまだまだ広がっている途中です。
「もしかしたら自分や家族にあてはまるかも」と思っても、それは「弱さ」ではなく「特性」です。
それぞれの得意や強みを大切にできる社会を目指していきたいですね。
📚 出典
- American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM-5).
- World Health Organization. (2022). International Classification of Diseases 11th Revision (ICD-11).