💬 娘が約束を守ってくれない…その気持ちと、親としての向き合い方

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― 「伝わらないつらさ」をやわらげるために ―

こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。

今回は40代のお母さんから寄せられたご相談をご紹介します。


🌼 ご相談

小学生の娘がいます。
以前から「約束を守る」ということが苦手で、
「やる」と言ったことを忘れてしまったり、
「あとでやる」と言いながらそのままにしてしまうことが多くあります。

そのたびに注意はしているのですが、
反省しているようには見えず、
まるで“悪いと思っていない”ような態度に見えてしまうのです。

私としては、娘のためを思って一生懸命伝えているつもりなのに、
その気持ちが届かないのがつらく、
怒ることも増えてしまいました。

どうすれば娘といい関係で向き合えるのでしょうか。
また、この気持ちはどう整理すればいいのでしょうか。


🌱 回答

このようなご相談は、発達特性を持つお子さんだけでなく、
思春期・学童期の多くの親子で起こる“自然なすれ違い”です。

まず、お母さんが「自分の気持ちを整理しよう」と考えていること自体が、
とても誠実で、関係を大切にしている証拠です。

ここでは3つの視点から、心の整理と関わり方の工夫をお話しします。


🧭 1. 「約束を守れない=悪気がある」ではない

お子さんが約束を守れないとき、
多くの親御さんは「わざと」「気持ちがない」と受け取ってしまいがちです。

しかし実際には、
「約束を守る」という行動そのものが、思っているより高度なスキルなのです。

たとえば、

  • 時間の見通しを立てる力
  • 優先順位をつける力
  • 今の気分を後回しにする力
  • 指示や約束を覚えておくワーキングメモリ
    など、複数の脳機能(実行機能)が必要です。

ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つお子さんの場合、
これらの一部が苦手なことも多く、
**「できない=悪意」ではなく、「できる力がまだ育っていない」**ことがあります。


🧩 2. 「約束」が“プレッシャー”に感じられることもある

親が「約束を守って」と言うとき、
その裏には「あなたを信じている」「責任を持ってほしい」という愛情があります。

しかし子どもの側から見ると、
「うまくできなかったら怒られる」「また失敗するかも」という
“プレッシャー”として受け取ってしまうこともあるのです。

すると、
「約束=怖いもの」になり、
結果的に“思い出したくない”“避けたい”という心理が働いてしまう。

そのため、「約束」という言葉をやめて、
**「一緒にやってみよう」「できたらうれしいね」**と
“協力”の形に変えていくと、ぐっと関係が楽になります。


💭 3. 親の「つらさ」をそのまま受け止めることも大切

お母さんが「がんばっても届かない」と感じるとき、
心の中では次のような思いが渦を巻いています。

  • 自分の育て方が悪いのでは?
  • こんなに努力しているのに、なぜ伝わらないの?
  • 愛情が足りないと思われるのが怖い

こうした思いを「我慢する」ことは、決して良い方向にはつながりません。

むしろ一度、**「つらい」「悲しい」「むなしい」**という気持ちを言葉にしていいのです。

気持ちを否定せず、
「この気持ちは、娘を想うからこそ出てきている」
と確認するだけで、心の圧が少し下がります。


💡 4. 約束を守りやすくするための“環境調整”

行動の「できる・できない」は、環境に大きく左右されます。

たとえば次のような工夫は、特に効果があります。

🕒 ① 期限を短く区切る

「宿題をやる」ではなく「5分だけやろう」「プリント1枚だけ」に。
小さな達成感を積み重ねることが、**“やる気のスイッチ”**を生みます。

📋 ② 約束は言葉だけでなく“見える形”にする

紙やホワイトボード、スマホのメモなど、
視覚的に残る約束は、思い出しやすく実行率も高くなります。

🧍‍♀️ ③ 「一緒にやる」から始めてみる

“任せる”より“並んでやる”。
最初の数回を一緒に取り組むことで、「できた」という体験を共有できます。


🧠 5. 感情と行動は別もの ―「反省して見えない」だけ

「反省していないように見える」と感じるとき、
子どもが「何も感じていない」とは限りません。

多くの場合、

  • どう謝ればいいかわからない
  • 恥ずかしくて目を合わせられない
  • 失敗を思い出すのがつらい
    そんな理由で“感情表現が止まってしまっている”ことがあります。

つまり、**「感じていない」のではなく、「うまく表せない」**だけ。
だからこそ、行動で反省を求めるのではなく、
「次はこうしてみようか」と未来に焦点を当てて話すのが効果的です。


🌷 6. 親子関係は「正しさ」より「安心」

子どもの行動を変えるよりも、
まずは「安心できる関係」を守ることが大切です。

「どうして守れなかったの?」と問い詰めるよりも、
「次はどうしたら守れるかな?」と一緒に考える姿勢が信頼を育てます。

この“安心のベース”ができると、
子どもは自分から行動を見直すようになります。


🕊️ 7. 親の気持ちを整えるために

  1. 「頑張りすぎている自分」に気づく
    子どもを想うほど、完璧を求めてしまいます。
    「できない日があってもいい」と自分に言ってあげてください。
  2. 感情を書き出す
    つらい気持ちを紙に書くだけでも、
    脳の“感情処理”が整理され、落ち着きやすくなります。
  3. 他の親御さんと共有する
    「うちも同じです」という声を聞くだけで、
    「私だけじゃない」と感じられます。
    安心は、孤立を減らす最初の一歩です。

🌼 まとめ

親のつらさ親の対応のヒント
約束を守ってくれない約束を“協力”に変える
反省していないように見える感情を表現できないだけ
一生懸命が伝わらない気持ちの表現スタイルが違うだけ
気持ちがもたない自分を責めず、支援を頼る勇気を

💗 読者へのメッセージ

子どもが「約束を守れない」とき、
それは親を困らせたいからではありません。

ただ、「どうすればいいかわからない」「思い出せなかった」だけ。

そして、親がつらくなるのも当然のことです。
その痛みは、“愛情の深さ”の裏返し

だからこそ、
子どもを変えようとする前に、
自分の気持ちをいたわってください。

気持ちを整理することは、
親として弱くなることではなく、
子どもとより深くつながるための準備です。


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