🕊️ 発達障害をめぐる“いま”の課題

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― 行政・医療・教育・企業、それぞれの壁とこれからの連携 ―

こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。

発達障害(はったつしょうがい)という言葉が一般に広く知られるようになってから、
すでに20年以上が経ちます。

しかし、**理解が広がった一方で、支援の現場では今も多くの「ズレ」や「壁」**が存在しています。

行政の窓口に相談しても話が通じない。
医療機関で診断を受けたが、納得できないまま終わってしまう。
学校では昔ながらの「やる気の問題」と片づけられる。
職場では「配慮」が理解されず、孤立してしまう。

今日は、そんな“いまの現実”を冷静に整理し、
それぞれの分野で起こっている構造的な問題点と、
本当に必要な連携とは何かを考えていきましょう。


🏛️ 1. 行政の壁 ―「相談してもつながらない」現実

多くの家庭がまず最初に相談するのは、市役所や福祉センターなどの行政窓口です。
ところが実際には、こんな声が多く聞かれます。

「どこに相談すればいいのかわからない」
「窓口の人に“発達障害って何ですか?”と聞き返された」
「たらい回しにされて終わった」

これは決して珍しいことではありません。

🔍 背景にある問題

  1. 自治体ごとの知識格差
     職員の異動が多く、発達障害に関する専門研修が行き届いていない。
  2. 制度の複雑さ
     医療・教育・福祉の境界があいまいで、窓口が分断されている。
  3. 対象年齢による空白
     「児童期」と「成人期」の間に支援制度の切れ目がある。

結果、家庭や本人が自分で制度を探し、申請を繰り返さなければならないという自己努力型の支援構造になっています。


🩺 2. 医療現場の課題 ―「診断のゆらぎ」と専門性の不足

医療の世界でも、発達障害の理解は大きく進みました。
しかし実際の診断現場では、今も深刻な問題が存在しています。

💬 よくあるケース

  • ADHDを「単なる性格の問題」として見過ごす
  • ASDを「うつ病」や「社交不安」と誤診する
  • 双極性障害(そうきょくせいしょうがい)とASDを取り違える

このような誤診(ごしん)は、特に思春期以降や成人期に多く見られます。

🧠 背景にある要因

  1. 発達障害を専門とする精神科医の不足
  2. 診断ツールのばらつき(WAIS・ADOS・CAARSなどを使わないケースも)
  3. 併存症(けいそんしょう)の理解不足
     うつ、不安、強迫、チックなどが重なっても、1つしか診断されない。

「発達障害と診断されたが、薬を出されて終わり」
「診断書はもらえたけど、支援につながらない」

こうした声も非常に多く、
医療の“出口”にあたる支援機関との橋渡しの弱さが問題です。


🎒 3. 学校現場の課題 ―「理解の温度差」と「個別対応の限界」

教育の現場では、発達障害に関する知識が徐々に広がり、
通級指導教室や特別支援学級などの制度も整ってきました。

しかし、実際の学校生活ではまだこんな現実があります。

「担任の先生が“努力が足りない”と言う」
「支援の必要を伝えても、“うちの学校にはそういう制度はない”と言われた」
「特別支援の先生が週1回来るだけで、日常的には誰も見ていない」

🎓 背景にある構造

  • 教師の多忙化:1人あたりの児童・生徒数が多すぎて対応しきれない
  • 校内連携の不備:情報共有が「口頭」や「個人メモ」にとどまる
  • 研修機会の不足:発達障害について体系的に学ぶ時間が取れない

結果として、**「性格の問題」「怠け癖」「わがまま」**という古い価値観が残ってしまい、
子ども自身が「自分が悪い」と感じてしまう悪循環に陥ることがあります。


💼 4. 企業・職場の課題 ―「理解はあるが、実践がない」

企業でも「多様性」や「合理的配慮(ごうりてきはいりょ)」という言葉は浸透しています。
しかし実際の現場では――

「配慮します」と言われたけど、何をしてくれるのか不明
「体調を崩しても“頑張って”で済まされる」
「上司が発達障害を“甘え”と勘違いしている」

💼 背景にある課題

  1. 管理職の教育が追いついていない
  2. 産業医・人事・現場の連携不足
  3. 制度よりも“慣習”で動く職場文化

特に障害者雇用枠でも、
「とりあえず雇ったけど、具体的なサポート体制がない」というケースが少なくありません。


🧩 5. 共通する根本的な課題 ―「縦割り」と「つなぎの欠如」

行政・医療・教育・企業――
分野ごとの問題に見えますが、根っこは共通しています。

それは、**「縦割り構造」と「連携不足」**です。

支援機関どうしの情報共有がスムーズでなく、
家庭が自分で間を取り持たなければならない。
つまり、一番大変な人に負担が集中する構造になっているのです。


🌱 6. 改善のために必要なこと

🏛️ 行政には…

  • 専門職(心理士・ソーシャルワーカー)を常駐させる
  • 相談窓口の一元化
  • 発達障害に関する研修の義務化

🩺 医療には…

  • 発達障害専門外来・認定医制度の拡充
  • チーム医療(医師+心理士+作業療法士)の強化
  • 診断だけでなく支援への橋渡し機能を設ける

🎓 学校には…

  • 教員研修に発達障害を必修化
  • 校内支援チームを常設し、保護者と定期的に面談
  • 「配慮=特別扱い」ではなく「公平のための工夫」と伝える文化づくり

💼 企業には…

  • 管理職向け「発達特性理解研修」の実施
  • 障害者雇用の名目だけで終わらせず、
     **現場レベルのサポート担当者(ジョブコーチ)**を配置
  • 勤務時間や通院スケジュールへの柔軟な理解

💬 7. “支援のネットワーク”がつながるとき

発達障害の支援で本当に大切なのは、
「誰が主導するか」ではなく、
**「誰も取りこぼさない仕組み」**です。

行政・医療・教育・企業が横に並び、
お互いの情報を共有できるネットワークが整えば、
一人ひとりがもっと安心して生きられる社会に近づきます。


💗 読者へのメッセージ

もしあなたが今、
「相談してもわかってもらえない」
「どこに頼ればいいのかわからない」
と感じているなら――
それはあなたが悪いのではありません。

社会の仕組みが、まだ追いついていないだけです。

焦らず、一歩ずつ。
信頼できる人を見つけながら、
できる範囲で環境を整えていくことが、
なによりの「支援」につながります。


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