🌸 2025年版:発達障害(神経発達症群)の最新情報まとめ

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― 定義・診断基準・有病率の変化/治療薬アップデート/研究トレンドを一気に把握 ―

こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。

この記事では、2024〜2025年にかけて更新(こうしん)された公的統計・診断基準・治療薬情報・研究知見を、保護者・当事者・支援者の皆さんが安心して使える一次情報だけで整理しました。

  • できるかぎり**原典(公的サイト・論文)**へリンク/出典表示をしております。
  • 中学生の方でも読みやすいようにフリガナをふるようにしています。
  • 学術的(がくじゅつてき)な正確さと、実用的な解説を両立できるようにまとめました。

1) 定義と診断基準の“いま”

■ ICD-11の本格実装(WHO)

世界保健機関(WHO)のICD-11では、発達障害は**「神経発達症群(6A00〜6A0Z)」**として章立てされ、臨床記述と診断要件がオンラインで提供されています。各国で段階的導入が進み、臨床的実用性の向上(診断の分かりやすさ・再現性)も報告されています。 icd.who.int+2drugsandalcohol.ie+2

■ DSM-5-TR(米国精神医学会)

DSM-5のテキスト改訂(TR)により文言の精緻化が続いていますが、神経発達症群の大枠はDSM-5と整合。日本の臨床現場では**ICD(保険・行政)×DSM(臨床参照)**の併用が一般的です。(参考:各学会要領)


2) 有病率(ゆうびょうりつ)の最新動向

■ 自閉スペクトラム症(ASD)

米CDCのADDMネットワーク最新報告(2025年)では、8歳児のASD推定有病率が「31人に1人(3.2%)」。2018年の「44人に1人」、2020年の「36人に1人」からの上昇が続きます。識別の地域差・人種差も引き続き観察され、早期同定とサービス格差が課題です。 AP News+3疾病管理予防センター+3疾病管理予防センター+3

ポイント:増加の背景には、スクリーニング普及・認知の向上・診断基準の運用改善などが影響(原因が“増えた”と即断しないバランスが重要)。


3) ガイドライン/推奨のアップデート

■ ADHD(小児・思春期)

米小児科学会(AAP)の臨床ガイドラインは2019年版が依然ベース(2024年CDCページでも参照)。評価は多情報源(家庭・学校)から、治療は心理社会的支援+薬物療法を年齢に応じて組み合わせます。 AAP Publications+2疾病管理予防センター+2

■ ASD(支援・介入)

英国NICEのASD支援(19歳未満)は2024年サーベイランスで心理社会的介入の更新が予定され、介入の質評価と個別化が一層重視に。米CDCは、**行動アプローチ(例:ABA)**をエビデンスの厚い選択肢として整理しています。 NICE+1

日本国内では『ADHD診断・治療ガイドライン第5版』(2022/電子版2023)が標準参照。心理社会的治療を優先し、効果不十分なら薬物療法を段階的に検討という立て付けです。 医書.jp+2株式会社じほう+2


4) 薬物療法の最新トピックス(ADHD中心/ASDは併存症対応が主体)

■ スティムラント(刺激薬)クラスの安全性ラベリング変更(米FDA 2025)

6歳未満への徐放製剤使用で体重減少リスクなどの副作用が高いことから、FDAがクラス横断でラベル改訂を指示(適応外使用の注意喚起)。保護者・医療者のモニタリング強化が推奨されます。 U.S. Food and Drug Administration+1

■ 日本:承認薬の概況(再確認)

  • メチルフェニデート徐放(OROS):2007承認
  • アトモキセチン:2009承認(非刺激薬
  • グアンファシン徐放:2017承認(α2A作動薬
  • リスデキサンフェタミン(ビバンセ):2019承認(取扱いは厳格)
    いずれも適正使用副作用管理が前提。 PMDA+4PMC+4drug-interaction-research.jp+4

■ 新規・追加選択肢(米国発)

  • ビロキサジン徐放(Qelbree)2021小児〜2022成人承認非刺激薬。2025年に授乳期データなどラベル更新。国内未承認。 NCBI+2Drugs.com+2
  • センタナファジン(NDRI+SRIの“三重”再取り込み阻害)小児・思春期で第3相陽性報告、査読誌掲載。承認取得前の開発段階ですが有望株PubMed+3Otsuka US+3JAACAP+3

実臨床の示唆:刺激薬が合わない/不耐のケースで、非刺激薬の層が厚くなりつつある一方、年少児への使い方は各国で慎重化の流れ。

■ デジタル治療の拡張

ゲーム療法で知られるAkiliのEndeavorOTC成人ADHD向けOTC(市販)として米FDAクリアランス(医師処方なし)。補助的選択肢として位置づけ(薬の代替ではない)。 ウォール・ストリート・ジャーナル


5) ASD:薬物治療の位置づけ(コア症状を“直接”改善する薬は未確立)

ASDでは、易刺激性(いしげきせい)や不安・睡眠など併存症状の治療が中心。オキシトシン点鼻は一部で効果報告があるものの、大規模RCTの一貫した有効性は示されておらず、現時点で標準治療には非推奨の立場が主流です。 Nature+1

近縁領域では、レット症候群向けトロフィネタイドが各国で承認・保険評価の進展。ASDそのものとは別疾患ですが、神経発達症への分子標的という流れを後押し。 Nature+1


6) 遺伝学(いでんがく)・生物学の最前線

■ ADHD:ゲノムワイド解析の進展

大規模GWASで**リスク座位の増加(例:27座位)**が報告され、注意・実行機能などの関連領域が具体化。多遺伝子(た・いでんし)×発達段階の相互作用を前提に、表現型の多様性(重なり・併存)を説明する枠組みが磨かれています。 PubMed

■ ASD:大規模エクソーム/サブタイプ化の波

超大規模エクソーム解析の継続で新規候補遺伝子の追加・解釈が進行。2025年には表現型240項目から4サブタイプを提案し遺伝学的差異ともリンクさせる研究が報道され、“個別化”の足場が固まりつつあります(Nature/NG系の最新動向)。 Nature+2Nature+2

実務への示唆:遺伝学の成果=直ちに診断・治療の変更ではありません。リスク理解と家族支援、併存症の予防へ、少しずつ橋渡しが進む段階です。


7) 教育・支援の実装トレンド(国・地域差に注意)

  • 学校現場:合理的配慮(ごうりてきはいりょ)/別室・通級/学習環境の**“見える化”**が国際的潮流。
  • 家庭支援ペアレント・トレーニング睡眠・生活リズムのてこ入れが薬物療法の前提/併用で効果増強
  • 就労支援:障害者雇用では通院両立の配慮が“合理的配慮”の一例として各国で明文化。国内外の制度窓口とつながることが肝心。 疾病管理予防センター

8) 日本の最新事情(要点だけサッと)

  • 薬剤ラインナップ:OROSメチルフェニデート/アトモキセチン/グアンファシン徐放/リスデキサンフェタミン(厳格管理)。適正使用ガイドで心理社会的支援の優先と副作用管理を再確認。 PMC+2PMDA+2
  • 制度:ICD-11移行の解説資料(WHO)が参照可能。国内ガイドは第5版ADHDガイドラインが臨床標準。 drugsandalcohol.ie+1

9) これから1年の「注目ポイント」チェックリスト

  1. ADHD
  2. ASD
    • サブタイプ/バイオマーカー研究の外部検証。 Reuters
    • 薬物介入は併存症中心のまま(オキシトシン等は保留)—行動療法・教育支援の質向上が主戦場。 Nature
  3. 公衆衛生

10) まとめ(安心して使える“実用メモ”)

  • 発達障害は単一の病名ではなく、神経発達症群という特性のまとまり(ICD-11/DSM)。 icd.who.int
  • ASDの有病率1/31(米8歳児)。早期発見・支援体制の強化が最優先課題。 疾病管理予防センター
  • ADHD薬物療法は選択肢が拡大しつつも、低年齢では安全性ラベルに留意。心理社会的介入が土台U.S. Food and Drug Administration+1
  • ASDのコア症状を直接改善する薬は未確立。行動・教育的支援+併存症治療が現実的ベストプラクティス。 疾病管理予防センター
  • 遺伝学は“多遺伝子×発達”で理解が進展。個別化支援に向けた地ならしが進む。 PubMed+1

参考・出典(一次情報/公的・査読ソース)


💗 読者へのメッセージ

“最新情報”は、しばしば見出しが先行しがちです。
大切なのは、一次情報に立ち返ることと、目の前の生活を良くする具体策へ落とし込むこと。

  • ASD:行動・教育的支援を個別化し、併存症を丁寧にケア
  • ADHD生活リズム/環境調整+スキル訓練を土台に、必要時に薬物療法を安全に
  • 家族支援:ペアレント・トレーニングや学校・職場との連携が力になります

今日の小さな一歩が、明日の大きな安心につながります。

※補足:海外情報は日本の承認状況と異なる場合があります。実際の受診・治療・就学上の判断は、主治医・学校・自治体の最新の案内に従ってくださいね!


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