― 学校になじめない子を支える「もうひとつの居場所」 ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、40代のお母さんから寄せられたご相談をご紹介します。
学校になじめず、普通級から別室登校に切り替えた娘さん。
少し気持ちは楽になったように見えるけれど、
「別室登校ってそもそもどんな制度なの?」「どういう扱いになるの?」と、
学校に聞いてもはっきりとした説明が得られず、戸惑っている――
という内容です。
💬 ご相談内容
中学生の娘がいます。
学校になじめず、最近は別室登校になりました。
普通教室には入らず、特別室のような場所で過ごしています。
娘の表情は少し落ち着いてきたように見えますが、
別室登校という制度がどういうものなのか、先生に聞いてもよくわかりませんでした。
授業の扱いや出席の記録など、どうなっているのかも不安です。
別室登校とはどんな制度なのでしょうか?
🧠 回答:「別室登校」は“制度”というより“支援の仕組み”
まず大切なこととして、
**別室登校(べっしつとうこう)は法律で一律に定められた制度ではなく、
各学校や自治体が設けている「支援の仕組み」**です。
つまり、「全国で共通のルール」があるわけではなく、
学校ごと・地域ごとに運用の仕方が異なります。
ですので、この記事では一般的な内容を解説しますが、
最終的な確認は必ず通っている学校に行うことを前提に読んでくださいね。
🌿 別室登校とは?
別室登校とは、
教室での集団活動に心理的な負担を感じる子どもが、
学校内の別の部屋(相談室・保健室・特別支援教室など)で過ごす登校形態です。
目的は、「登校を続けること」ではなく、
**“安心して学校生活に関われる形を見つける”**こと。
言い換えると、
「学校に行ける/行けない」の“間”を支えるための柔軟な仕組みです。
🧩 別室登校の主なタイプ
別室登校といっても、学校によって名称や運用が異なります。
代表的な3つの形を紹介します。
① 保健室登校
保健室で過ごす登校形態。
体調面・心理面でのサポートが中心で、
看護師(養護教諭)との信頼関係を軸に過ごします。
特徴:
- 無理なく登校習慣を保てる
- 静かな環境で安心して過ごせる
- 授業には参加しないことが多い
② 相談室登校(別室登校)
学校内の「相談室」「サポートルーム」「心の教室」などで過ごす形。
スクールカウンセラーや支援員、特別支援教育コーディネーターなどが関わります。
特徴:
- 学習サポートを受けられる場合がある
- クラスとの交流を“無理のない範囲で”続けられる
- 教室復帰を目的にしているケースもある
③ 特別支援教室(通級指導教室)
発達特性などが背景にある場合に、
週数時間だけ支援教室で個別指導を受ける形。
特徴:
- 「普通級に在籍しながら支援を受ける」形式
- 先生が児童の特性を理解したうえで支援
- 学校生活全体を見守るサポートにつながる
🧠 別室登校が設けられる背景
心理学や教育支援の観点では、
「別室登校」は“回避”ではなく“適応のプロセス”と考えられています。
🌸 1. 「集団」に疲れた心の休憩場所
学校という集団生活の中では、
コミュニケーションや協調行動など、
多くのエネルギーを使います。
人間関係に疲れきってしまった子どもにとって、
「教室に入らない」という選択は**逃げではなく、“心の安全を保つ方法”**なのです。
🌿 2. 「行かない」から「行ける」に戻るステップ
別室登校は、
「不登校になる前の緩やかなステップ支援」として機能します。
- 完全に家にこもる前に、まず“学校という場所にいる”経験を続ける
- 時間・曜日・関わる人を調整しながら、“少しずつ戻る”準備をする
無理に教室に戻すよりも、
「安心できる場を経由して、少しずつ社会に再接続していく」ことが目的です。
☀️ 3. 「自己肯定感(じここうていかん)」を守るため
教室で苦しむ日々が続くと、
子どもは「自分はダメだ」「みんなと違う」と感じてしまいます。
別室登校は、
そうした**“自分を否定しない場所”**を確保する意味を持っています。
🎒 出席扱いはどうなる?
この点も、学校や自治体によって運用が異なります。
一般的には――
- 同じ校舎内の別室(相談室や保健室)で過ごしていれば「出席扱い」になる場合が多い
- 学習活動が行われていれば「出席」
- 来校しても授業参加が難しい場合は「出席停止扱い」とはならず、“学校に在籍”の扱いが続く
ただし、学校ごとに細かい判断基準が違うため、
必ず担任や特別支援コーディネーターに確認することが大切です。
🧩 「別室登校」からの進路と見通し
別室登校の期間が長くなると、
「このままで進級・進学できるのか?」と不安になる保護者も多いです。
ですが、
- 出席日数のカウントは柔軟に認められることが多い
- 定期テストの代替課題を用意してくれる学校もある
- 高校進学時にも、別室登校経験が不利になることはほとんどない
というのが実情です。
実際、別室で安心を取り戻してから再び教室に戻る子、
別室のまま卒業して社会に適応していく子、どちらのケースもあります。
☕ 親としてできること
🌸 1. 「別室登校=失敗」と思わない
別室に行くことは「逃げた」ことではありません。
“居場所を選べた”という前向きな行動です。
安心できる場所を見つけたということは、
すでに回復の一歩を踏み出している証拠です。
🌿 2. 「学校との距離感」を調整する
すべてを先生に任せる必要もありませんし、
すべてを家庭で抱え込む必要もありません。
学校と家庭が「同じゴール」を共有できるように、
- 子どもがどんな時間を安心して過ごせているか
- 今後、どんな形で関わりを広げたいか
を一緒に確認していくことが大切です。
☀️ 3. 「本人のペース」を最優先にする
別室登校は、「通うこと」よりも「安心して過ごせること」が目的です。
焦って教室に戻すと、
「やっぱり無理だった」と再びつらくなってしまうこともあります。
「今日はどんな時間を過ごしたの?」
「行けたね、がんばったね」
小さな“できた”を一緒に喜ぶことが、次の一歩につながります。
🧠 心理学的な視点から見た「別室登校」
心理学では、心の回復には3つのステップがあるとされています。
1️⃣ 安全 … 不安を感じない環境を整える
2️⃣ 安定 … 自分らしさを取り戻す
3️⃣ 再挑戦 … 新しい経験を少しずつ増やす
別室登校は、このうちの「安全」と「安定」を支える場所。
焦らずこのステップを経ることで、
再び「挑戦できる心の土台」が育っていきます。
🌸 まとめ
- 別室登校は“制度”ではなく、学校が独自に設ける「支援の仕組み」。
- 子どもの心を守り、登校と不登校の“間”を支える場所。
- 出席扱いや進級は学校によって異なるため、個別確認が必要。
- 「居場所を選べた」こと自体が、回復の第一歩。
- 無理に戻すよりも、「安心」を積み重ねることで前へ進める。
💗 読者へのメッセージ
「別室登校」という言葉を聞くと、
“特別扱い”のように感じてしまう方もいるかもしれません。
けれど実際は、
子どもの心を守るための優しい仕組みです。
「学校に行けるようにする」よりも、
「安心して生きられるようにする」ことを大切に。
お子さんのペースで、
少しずつ“居場所の輪”が広がっていきますように。
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