― 子どもを支えるために、まず「自分の困りごと」を整える ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治(いとうけんじ)です。
前回の記事では、
「自分のADHDが子どもに遺伝したのでは」と悩む
50代のお父さんのご相談を取り上げました。
今回のテーマはその続きです。
🌼 ご相談(前回の続き)
自分自身もADHDで、子どもも同じくADHD。
子どもの困りごとを見るたびに、
自分のつらかった過去と重なって見えてしまう。
助けてあげたいと思うけれど、
自分自身も現在進行形で困ることが多く、
“どう支えればいいのか”わからない。
自分の特性とうまく付き合いながら、
子どもとも良い関係を築くにはどうすればいいのか?
🌱 回答
ここからは「ADHDの親が自分の特性とうまくつき合うための実践ガイド」を、
心理学・脳科学・時間管理の研究をふまえてわかりやすく解説していきます。
1. ADHDの困りごとは「怠け」ではなく“脳のくせ”
まず理解してほしいのは、
ADHDの特性は性格の問題でも、努力不足でもないということです。
ADHDの脳の特徴
- 注意が散りやすい
- 衝動的な行動が出やすい
- 時間感覚(時間の見通し)が苦手
- 興味のないことへの着手が難しい
- 感情がゆらぎやすい
- ADHD特有の“過集中(かしゅうちゅう)”がある
これらは、意思ではなく脳のネットワークの特性です。
だからこそ――
「うまくやれない自分」を責めるのではなく、脳のタイプに“合わせる”ことが必要になります。
2. 自分の特性を「理解」することは、子どもの未来を守る力になる
親が自分の困りごとを理解し、向き合おうとすると、
子どもは安心して“自分の特性”を受け入れることができます。
- 「大人になっても工夫すれば生きられる」
- 「失敗は能力の問題じゃない」
- 「俺(私)もできるかもしれない」
これは、子どもにとって何よりの支えです。
あなた自身が自分の困りごとに目を向けることは、
子どもの安心の源泉になります。
3. ADHDの大人が実生活でできる“具体的な工夫”
ここからが最も実践的な部分です。
✦ ①「できない」を減らすより「忘れない仕組み」を作る
ADHDの人は“覚えておく”ことがとても苦手です。
そこで必要なのは 「記憶ではなく仕組み」 です。
仕組みの例
- スマホのアラームを複数セット
- 予定は「1つの場所」に一元化(手帳でもアプリでも可)
- 部屋に“メモを貼る場所”を固定
- カレンダーは予定を書くスペースを大きく
- 毎日の家事はチェックリスト化
- 鍵・財布は“定位置ルール”をつくる
「工夫で誤魔化している」のではなく、
“脳の特性に合わせて生活を設計する” という発想が大切です。
✦ ②「先延ばし」を減らすには“着手ハードル”を下げる
ADHDに最もよくあるのが「始められない」問題です。
有効な方法
- タスクを3分に分解(「3分だけやる」)
- 1つの作業を“最小単位”まで割る
- 「タイマーをつけてスタート」で強制的に着手
- 「やる気を待つ」のではなくタイミングを決める
- “できた瞬間”に自分を褒める
重要なのは、量より“開始”の体験。
1分だけでも、脳が動き始めます。
✦ ③ 感情の波は「呼吸」「間を作る」「刺激を減らす」で整える
ADHDの大人は、感情が強く動きやすく、
小さな失敗が“全部ダメ”という気分に広がることがあります。
落ち着くポイント
- 10秒深呼吸をする
- その場をいったん離れる
- 明かりを少し落とす
- 水を飲む
- ゆっくり数を数える
- カフェインの量を調整する
特に“間を置く”行動は、衝動と感情の暴走を止めやすくなります。
✦ ④ 過集中(かしゅうちゅう)のコントロール
ADHDの大人は好きなことに没頭しすぎてしまうことがあります。
工夫
- “タイマー”を必ず使う
- 過集中が起きる行動は、時間帯を決めておく
- 家族に「声かけをお願いする」のも有効
- 水分・食事・休憩を強制的に入れる
過集中は悪いものではなく、
“才能の入り口” のような力でもあります。
ただ、使い方を間違えると生活が崩れるため、
「管理しながら使う」のがポイントです。
4. 親が弱さを見せることは、子どもの安心につながる
ADHDの人は「失敗体験」を繰り返してきたことで、
“強がる癖”がついていることが多いです。
しかし、子どもにとって安心なのは、
「完璧な親」ではなく「一緒に悩んでくれる親」 です。
こんな声かけが効果的
- 「パパ(ママ)も集中が苦手な日があるよ」
- 「だから一緒にやってみようか」
- 「うまくいかない日があっても大丈夫だよ」
弱さを隠すのではなく、
“上手に見せる”ことで、
子どもは自分を責めなくなります。
5. 罪悪感に飲まれないための「心のメンテナンス」
罪悪感を抱える親ほど、
「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い込んでしまいます。
でも、親が疲れると、
その負担は直接子どもに乗ります。
心を守るための習慣
- 1人の時間を意識的に作る
- 完璧を求めない
- “できたこと”を記録していく
- 信頼できる人に話す
- 子どもと距離を置いて休む日を作る
あなたは、すでに“十分すぎるほど頑張っている”ということを
忘れないでください。
6. 「親である前に、自分を生きていい」
ADHDの親御さんが最も抱えやすい苦しみは、
「子どものために、親の自分は頑張らなければいけない」
という思いです。
でも、本当は逆です。
💭 子どもを守る最大の方法は
あなた自身が安定していること。
あなたが自分らしく生きていること。
あなたが無理をしすぎていないこと。
これが子どもにとって一番の安心になります。
🌈 まとめ ― ADHDは“弱さ”ではなく、“使い方”の問題
あなたは、
子どもと同じ特性を持っていることで、
誰よりも深く子どもの気持ちを理解できます。
- ADHDの困りごとは「脳のくせ」
- 自分を責める必要はない
- 生活を“仕組み化”すれば安定する
- 親が自分を理解すれば、子も自分を理解できる
- 完璧ではなく“安定”が大切
- 親自身が自分らしく生きることが、子どもの未来を守る力になる
子どもが生きやすくなるための第一歩は、
親であるあなたが「自分を大切にすること」から始まります。
その姿こそが、
子どもにとっての“最高のモデル”になるのです。
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