― 罪悪感との向き合い方と、親としてできる本当の支え ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治(いとうけんじ)です。
今回は、50代のお父さんから寄せられたご相談をご紹介します。
🌼 ご相談
自分自身もADHDの診断を受けています。
そして子どもも同じくADHDの診断が出ました。
自分が子どもの頃から悩んできたこと、できなかったこと、苦しかったことを、
今まさに息子(または娘)が同じように悩んでいる姿を見ると、本当につらいです。
自分に“何かできること”を一生懸命探すのですが、
そもそも自分がうまく乗り越えてこられなかったので、
アドバイスも自信を持ってできず苦しく感じています。
「自分のせいで遺伝させてしまった」
そんな罪悪感がずっと消えず、
どのように感情と向き合っていけばいいのか悩んでいます。
🌱 回答
まず、この相談をしてくださったお父さんの気持ちを、私は深く大切に受け止めたいと思います。
「自分のせい」ではなく、「自分だからこそ寄り添える」
この視点へ、ゆっくり心を導くことが今回のテーマです。
ここから、3つの軸でていねいに整理していきます。
1. 「遺伝させてしまった」は事実ではなく“痛みの言葉”
多くの親御さんが、
子どもに発達特性があると “遺伝” を自分の責任だと抱え込みます。
ですがこれは、事実ではなく――
「子どもを守りたいのに守れていないと感じたときの痛みの言葉」
なのです。
🧩 発達特性は“遺伝子”ではなく“脳の多様性”
ADHDやASDの発達特性は、
単一の遺伝子で決まるものではありません。
- 多因子(複数の遺伝要因)
- 環境
- 成長段階
この複合で形成されます。
そして、特性は 弱さ ではなく 脳のタイプの違い であり、
長所と短所がセットになった“個性の構造”です。
🧠 だからこそ、こう言い換えてみてください
「子どもは自分に似た脳のタイプを持って生まれてきた」
「これは悪いものではなく、生き方のクセなんだ」
罪悪感は、あなたが“深く愛している証拠”。
決して、責任を負うべき問題ではありません。
2. 自分が苦しんだ経験は「アドバイスできない弱さ」ではなく、“子どもの人生を理解できる強み”
お父さんはこう言いましたね。
自分が解決できなかったから、子どもに助言できない。
でもそれは、本当は逆なのです。
🌟 あなたの経験は「失敗」ではなく“地図”になる
あなたがこれまでの人生で苦しんだ道は、
子どもが進む未来の道と、とてもよく似ています。
だからこそ、他の誰よりも――
- つらさを具体的に理解できる
- 失敗に寄り添える
- 落ち込んだときの孤独を知っている
これらは、専門家が持てない 圧倒的な強み です。
🧭 子どもに必要なのは「アドバイス」ではなく「理解者」
発達特性を持つ子どもが何よりも求めているのは、
- 失敗しても嫌われない
- うまくいかなくても否定されない
- 「大丈夫だよ」と言ってくれる大人がそばにいる
この 安心の土台 です。
あなたは、子どもにとって
「同じ苦しみを知っている味方」です。
この存在こそが、最大の支援です。
3. 罪悪感を軽くする“心の整理方法”
ここでは、親御さんがよく抱える痛みを整理します。
① 「自分の過去の姿」を子どもに重ねてしまう
昔の自分の傷が、子どもを見たときに呼び起こされることがあります。
これは自然な反応です。
でも、その痛みは“過去のあなたが癒えていない部分”でもあります。
🔶 対処法
- 子どもを自分と同一視しない
- 子どもは「あなたの続き」ではなく「別の人生」
- 子どもには、あなたとは違う“支援や環境”がある
それだけで、未来は全く違います。
②「助けられない自分が許せない」
“わかってあげたいのに、うまく助けられない自分”に落ち込む親御さんは多いです。
でも、人を助けるときの基本は “完璧ではなく、安定” です。
🔶 対処法
- できる日とできない日があっていい
- 「全部を解決する必要」はない
- 「そばにいること」が最大の支え
あなたができることは、いつも十分すぎるほどです。
③「自分が原因」という誤解から抜け出す
子どもの特性は「あなたのせい」ではありません。
むしろ、
あなたがADHDだからこそ、子どもが救われる場面が必ずある。
🔶 親がADHDだと…実は強みも多い
- 子どもが苦手な部分に気づきやすい
- 小さな変化に敏感
- 発想の柔軟性がある
- 不器用な子の気持ちがわかる
子どもの育ちにとって、これは宝物です。
4. 子どもとの向き合い方
ここからは実践的な方法です。
👨👧 ①「できなかったこと」ではなく「できた瞬間」を探す
ADHDの子どもは成果よりも、
**できた瞬間の“認知”と“褒め方”**が自己肯定感に直結します。
- 椅子に座れた
- 準備を5分早く始めた
- 途中で投げ出さず挑戦した
これらを「できたね」と言うだけで伸びます。
👨👧 ② 「困った行動」を叱るのではなく“仕組みで補う”
ADHDの特性は、
“努力”よりも“環境設定”で大きく改善します。
- タスクは時間で区切る
- 音・光・物の刺激を減らす
- 見える場所に予定を貼る
- 一緒に始める(共同作業効果)
これらは、お父さん自身にとっても助けになります。
👨👧 ③ 親が自分の特性を理解することが、子どもの安心になる
親が自分の生きづらさを理解し、
自分のペースを受け入れようとすると――
その姿は、子どもにとって 強烈な“生き方のモデル” になります。
- 無理して潰れないこと
- 助けを求める勇気
- 自分を責めすぎないこと
あなたがこれを身につけるだけで、
子どもは「大人になっても大丈夫なんだ」と感じられるのです。
🌈 まとめ ― 罪悪感ではなく「つながり」が子を育てる
あなたの気持ちを一言で言えば――
「子どもに幸せになってほしい」
ただ、それだけです。
その純粋な願いが、今は罪悪感という形をとっているだけ。
でも真実は違います。
- ADHDは“悪いもの”ではない
- 子どもはあなたと違う人生を歩む
- あなたの経験は、子どもを理解する力になる
- アドバイスより“寄り添う姿勢”が最大の支援
- 親が自分の特性を受け入れると、子どもも自分を受け入れられる
罪悪感の奥にあるのは、深い愛情です。
その愛情は、子どもにとって何よりも心の力になります。
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