― 信頼できる医療との関係を築くために ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
発達障害(はったつしょうがい)や心の不調で通院を続けていると、
「このままの治療で本当に大丈夫だろうか」
「主治医と合わない気がする」
と感じる瞬間が出てくることがあります。
実はこの「不安」や「違和感」は、決して特別なことではありません。
日本の精神科医療には、制度的にも構造的にも、
患者側が不信感を抱きやすい要素が多く存在しているのです。
今回は、そうした背景をふまえながら、
医療との向き合い方・信頼関係の築き方・現実的な選択肢を
やさしく整理していきます。
🧭 1. 不安を感じるのは「わがまま」ではない
まず一番伝えたいことがあります。
主治医や治療に対して不安を感じるのは、
あなたが神経質だからでも、疑い深いからでもありません。
それは、**「自分の状態を大切にしたい」**という自然なサインです。
精神科や心療内科では、「医師との信頼関係(治療同盟)」が治療効果を大きく左右します。
どんなに薬が合っていても、
話を聞いてもらえない・理解されないという不信感が続けば、
心の安定にはつながりません。
🩺 2. なぜ「信頼できない」と感じるのか ― 現場の構造的な背景
🕐 短時間診察の現実
多くの精神科クリニックでは、
1人の医師が1日に50〜100人を診ることもあります。
そのため、診察が1〜3分で終わることも珍しくありません。
医師が「時間をかけたい」と思っていても、
経営的にそうできない構造があるのです。
💴 医療報酬制度のゆがみ
精神療法の点数(30分未満/30分以上)は、
実際の時間ではなく**“行為”としての算定**で決まります。
そのため、短時間でも「心理的支援を行った」と記録されてしまうことがあります。
これが、患者から見ると「実態と違う」と感じる大きな理由です。
👩⚕️ 専門性と人手不足
発達障害や併存症(けいそんしょう)を理解できる精神科医はまだ少なく、
大学病院以外では「広く浅く診る」体制になりがちです。
結果として、症状の誤解や診断のゆらぎが起こりやすい現状があります。
📉 3. よくある「不信感を抱く瞬間」
- 毎回、診察が数分で終わる
- 質問しても「様子を見ましょう」で終わる
- 診断名がコロコロ変わる
- 記録や説明があいまい
- 自分の意見を言いづらい雰囲気がある
こうした状況が続くと、
「本当に自分のことを見てくれているのだろうか」
という不安が積み重なっていきます。
🧠 4. 信頼関係を取り戻すためにできること
✍️ (1) メモを持参する
診察は限られた時間しかありません。
あらかじめ「話したいこと」「聞きたいこと」を書き出しておくと、
短時間でも中身のあるやり取りができます。
例:「薬の副作用が気になる」「最近寝つきが悪い」「仕事で集中できない」など。
💬 (2) 言いにくいことも“整理して伝える”
たとえば「先生の説明が少し早くて理解しづらいです」といった
小さな一言が、関係を見直すきっかけになります。
これはクレームではなく、治療を良くするための対話です。
📄 (3) 診療情報を開示してもらう
カルテ開示請求をすることもできます。
内容を確認すると、自分の状態がどう記録されているかが見え、
誤解がある場合は修正のきっかけにもなります。
🚪 5. それでも改善しないときの選択肢
🏥 (1) 転院する
主治医を変えることは、患者の正当な権利です。
自立支援医療を受けていても、指定医療機関の変更申請をすれば転院可能です。
(自治体の障害福祉担当に「変更申請をしたい」と伝えるだけで手続きできます。)
紹介状を依頼するときは、
「他の先生の意見も聞いてみたい」とやわらかく伝えるのが現実的です。
💻 (2) オンライン診療・遠隔相談を利用する
近くに専門医がいない場合、
オンライン診療を使って遠方の医師に相談することもできます。
精神科では初診から対応できるケースもあり、
通院困難な人にとって大きな助けになります。
例:国立精神・神経医療研究センター、大学附属病院の発達外来など。
🧩 (3) 発達障害者支援センター・精神保健福祉センターに相談
「今の治療に不安がある」「医療機関を変えたい」などの相談に対応してくれる機関があります。
どちらも無料で、地域ごとに設置されています。
職員は臨床心理士や精神保健福祉士などの専門職です。
また、こうした機関は医療機関との橋渡しをしてくれることもあります。
🤝 (4) 家族や信頼できる第三者と情報共有する
治療方針を一人で抱え込むと、判断が難しくなります。
家族や友人、支援センターのスタッフなど、
一緒に診察内容を整理してくれる人がいると、客観的に考えやすくなります。
🧩 6. 「変えられないとき」にできる工夫
現実的には、すぐに転院できない人も多いでしょう。
その場合は、次のような方法で自分の心を守る対処ができます。
- 診察時に録音メモを取る(許可を得た上で)
- 自分で「通院ノート」をつける
→ 体調・睡眠・気分・薬の影響などを記録 - 医師の言葉を「指示」ではなく「参考」として受け止める
こうした記録は、いざ転院したときに経過説明として非常に有用です。
🩸 7. 虚偽記載や不正請求が疑われるとき
もし診療内容と明らかに異なる点数がついている(例:心理療法30分以上など)場合は、
保険者(健康保険組合・国保)や地方厚生局に相談することができます。
通報は匿名でも可能で、
「この病院で実際には短時間の診察しか行われていないのに、
長時間の精神療法を請求している」という形で報告できます。
この仕組みは患者の権利を守るために用意されています。
直接医師と対立することなく、制度的に是正が促されます。
🌿 8. 医師との関係を「終わらせる」のではなく「選び直す」
信頼関係を失った医師との関係を続けることは、
治療効果よりもストレスを増やす結果になりかねません。
大切なのは「敵対」ではなく、
**「選び直す勇気」**です。
治療は医師が「指導するもの」ではなく、
患者と一緒に「作っていくプロセス」です。
「この先生じゃなきゃダメ」ではなく、
「この先生となら、少し安心できる」
その感覚を大切にしてほしいと思います。
💗 読者へのメッセージ
精神科・心療内科の診察は、
薬をもらうだけの場ではありません。
本来は、あなたの心の状態を共有し、
どうすれば安心して生活できるかを一緒に考える場所です。
もし今、その関係がうまくいっていないと感じても、
それはあなたのせいではありません。
医療は「受けるもの」ではなく、
「一緒に作っていくもの」。
そのために、
「疑問を持つ」「調べる」「選び直す」――
そのすべてが、立派な“治療の一部”です。
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