「働きたいけど働けない。。。」――発達障害があっても、安心して社会とつながる「就労移行支援」のいろは

こんにちは。
心理カウンセラーの伊藤憲治です。

「働きたい気持ちはあるのに、身体がどうしても動かない」
「朝起きると激しい不安に襲われて、部屋から出られない」
「何度就職しても人間関係やミスで心が折れてしまい、もう自信がない……」

カウンセリングの現場でも、こうしたご相談を本当に数多くいただきます。
そして同時に、ご本人だけでなく、

「学校を卒業したけれど、この先どうやって社会に出せばいいのだろう」
「毎日家でふさぎ込んでいる我が子を見て、親として何をしてあげられるのかわからない」

と、夜も眠れないほど将来を心配されている親御さんからの悲痛な叫びにも、たくさん向き合ってきました。

はじめにお伝えしたいのは、働けないのはあなたの意志が弱いからでも、親御さんの育て方のせいでも決してないということです。

発達の凸凹(ADHDやASDなど)を抱えていると、脳のワーキングメモリや感覚の過敏さ、自律神経の乱れによって、一般的なペースで社会に合わせようとするだけで心と身体が限界(フリーズ)を迎えてしまうことがあります。

ただ、世の中には、いきなり荒波の中に飛び込むのではなく、「自分のペースで、安心して働くための準備体操ができる場所」がちゃんと用意されています。

それが、今回ご紹介する「就労移行支援(しゅうろういこうしえん)」という公的な福祉サービスです。

📌 1|就労移行支援とは?「働くためのトレーニングジム」

「就労移行支援」という言葉を聞くと、ハローワークのようなお仕事のあっせん所をイメージされる方も多いかもしれません。

しかし、その役割はまったく異なります。

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく国の福祉サービスで、「一般企業への就職を目指す、発達障害や精神疾患などを抱えた方が、最大2年間通いながら働く準備を整える場所」なのです。

たとえるなら、「心と身体のトレーニングジム」であり、「自分自身の取扱説明書(トリセツ)を作る研究所」のような場所です。

■ 「就労継続支援(A型・B型)」との違い

似た名前の制度に「A型事業所」「B型事業所」と呼ばれるものがありますが、目的がはっきりと分かれています。

  • 就労移行支援:
    一般企業(一般枠や障害者雇用枠)への就職を目指し、スキルや体調管理を学ぶ場所(通所期間は原則2年間・賃金は出ない)
  • 就労継続支援A型:
    雇用契約を結び、最低賃金以上の給料をもらいながらサポートを受けて働く場所
  • 就労継続支援B型:
    雇用契約を結ばず、体調に合わせて無理のないペースで作業を行い、工賃(お小遣い程度の手当)を受け取る場所

「いつかは普通に会社で働いて自立したい」「でも今は自信がない」という方が通うのが、この就労移行支援です。

🌿 2|どんな時に使うものなのか?(利用のタイミング)

では、具体的にどのような状況のときに就労移行支援を検討すればよいのでしょうか。
当事者の方、そして親御さんの視点から、代表的なタイミングを整理してみますね。

① 仕事が続かず、退職や休職で自信を失ってしまったとき

「ミスを繰り返して上司に怒鳴られた」
「職場の空気や暗黙のルールが読めず孤立してしまった」
「過集中と燃え尽きを繰り返して限界がきた」

そうして傷ついて仕事を辞めた直後は、心が深く傷つき、自己否定の嵐に飲み込まれてしまいがちです。
この状態で焦って次の面接を受けても、同じ痛みを繰り返してしまうことが多いのですよね。

まずは傷ついた羽を休め、「なぜ前回の職場ではうまくいかなかったのか」をプロと一緒に客観的に振り返るために利用していきます。

② 昼夜逆転して部屋から出られない生活が続いているとき

朝決まった時間に起きられない、着替えて外に出るのが怖い。
そんな状態からいきなり「週5日・フルタイム」で働くのは、誰だって無理があります。

就労移行支援の多くは、「まずは週に2日、午前中の1時間だけ通ってみる」「慣れてきたら週3日、お昼まで過ごしてみる」といったように、段階的なステップを踏むことができます。
生活リズムを取り戻す安全なリハビリの場として活用できるのです。

③ 学校を卒業したあとの進路に迷っているとき(親御さんの視点)

高校、専門学校、大学などを卒業したものの、一般の就職活動の流れに乗れず、そのまま引きこもり状態になってしまうケースも少なくありません。

「早くどこかに就職させなければ」と親御さんが焦るほど、家庭内の空気は張り詰め、お子さんはますます殻に閉じこもってしまいます。
そんな時、第三者の専門家がいる就労移行支援を挟むことで、親子関係の摩擦を和らげながら、社会への架け橋を作ることができるのです。

📖 3|知っておきたい「いろは」(手帳・お金・利用期間)

利用を考えるにあたって、みなさんが一番不安に思われる3つの疑問についてお答えしますね。

Q1. 障害者手帳を持っていなくても通えるの?

A. はい、手帳がなくても通うことができます。

「手帳を取るのにはまだ抵抗がある」「まだ正式な診断書しかない」という方でも心配いりません。
医師の診断書や意見書、自立支援医療受給者証などがあれば、お住まいの市区町村の窓口で「福祉サービス受給者証」を発行してもらうことで利用が可能です。
(※手続きの進め方は、通いたい事業所のスタッフさんが親身になって手伝ってくれます。)

Q2. 利用するのに費用はいくらかかるの?

A. 実は、9割以上の方が「自己負担0円(無料)」で利用されています。

福祉サービスの利用料は、前年の世帯所得(ご本人が独身の場合はご本人の収入)に応じて上限月額が決められています。
現在お仕事をされておらず収入がない場合、月々の利用料は0円になるケースがほとんどです。

交通費や昼食の補助を出してくれる事業所も増えていますので、お金の心配がある方もまずは見学時に気軽に相談してみてくださいね。

Q3. いつまで通えるの?

A. 原則として「最長2年間」です。

2年間というと、とても長く感じられるかもしれません。
ですが、最初の半年は体調と生活リズムを整え、次の半年でパソコンやコミュニケーションの訓練をし、最後の1年でじっくり応募先を探す……というように、心にゆとりを持って進められる十分な時間が確保されているのです。

💡 4|通うことで手に入る「本当のメリット」

私がカウンセラーとして、そして人事マネジメントや組織運営に携わってきた立場から見て、就労移行支援に通う最大の価値は「パソコンスキルが身につくこと」ではありません。

本当に手に入る一生モノの財産は、次の3つなのです。

① 自分の「疲労サイン」と「得意・不得意」がわかる(自己理解)
「どんな作業をすると過集中になるのか」「どんな言葉をかけられるとパニックになりやすいのか」を、失敗しても安全な環境の中で検証できます。自分の脳のクセを客観的に知ることで、社会に出たときの防御力が格段に上がります。

② 企業に求める「合理的配慮」をプロと一緒に言語化できる
面接で「配慮してほしいことはありますか?」と聞かれても、一人ではどう伝えていいか困ってしまいますよね。
事業所のスタッフが間に入り、「指示は口頭だけでなくメモやチャットでいただけると正確に動けます」「集中しやすいよう、壁側の席を希望します」といった、企業側も納得しやすい具体的な言葉に落とし込んでくれます。

③ 就職した後も「定着支援」で味方でいてくれる
就職が決まったら終わり、ではありません。
入社後もスタッフが職場を定期的に訪問し、上司との間に入って困りごとを調整してくれる「就労定着支援」という制度があります。この後ろ盾があるだけで、再就職への恐怖心はずっと軽くなります。

✅ 5|後悔しない「事業所の選び方」3つのチェックポイント

全国にはたくさんの就労移行支援事業所がありますが、場所によって雰囲気や得意分野は驚くほど違います。
選ぶときは、ぜひ以下の3点を確認してみてくださいね。

  • 必ず2〜3箇所は「見学と体験」に行くこと:
    ホームページの印象だけで決めず、実際に通っている利用者さんの表情や、室内の明るさ・静かさを肌で感じてみてください。
  • 事業所の「強み・特色」を見極める:
    プログラミングやデザインなどのIT特化型、データ入力や事務系に強いところ、生活習慣や対人コミュニケーションの回復を重視するところなど、ご自身の目指す方向に合っているか確認しましょう。
  • 【最重要】スタッフが「否定せず、じっくり話を聴いてくれるか」:
    上から目線で指導してくる場所ではなく、あなたのこれまでの辛さに寄り添い、ペースを尊重してくれるスタッフがいるかどうかが、何より大切です。

🌿 今日のまとめ:立ち止まることは、後退ではありません

周りの同世代がバリバリ働いている姿を見たり、我が子と同年代の子が社会で活躍している話を聞くと、焦りや申し訳なさで胸が押しつぶされそうになる夜もあると思います。

けれど、立ち止まって休むことは、決して後退でも脱落でもありません。
合わない靴を履いて走り続け、足を痛めてしまったら、一度立ち止まって自分にぴったりの靴を探すのは当たり前のことなのです。

就労移行支援は、その「あなただけの靴」をプロと一緒に見つけるための場所です。

今日こうして「就労移行支援という選択肢があるんだ」と知ってくださったこと。
それ自体が、ご自身やご家族の未来に向けた、とても大きくて温かい一歩だと私は考えています。

🌙 もし辛くなったり苦しくなったら。

「自分にはどんな支援が合っているのかわからない」
「家族だけで抱え込んでしまって、もう限界を感じている」

そんな時は、どうか一人で抱え込まずに、いつでもお気持ちをお話しにいらしてくださいね。

14年間、4万件以上の臨床経験の中で、たくさんのご本人・ご家族の再出発をご一緒してきました。
あなたの歩幅に合わせて、絡まった糸を一本ずつほどくお手伝いをさせていただきます。

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※ご質問や気になることがあれば、お気軽にフォームからお声がけくださいね。内容によってはブログやFAQでも温かく回答させていただきます。

ReCocoro(リココロ)
心理カウンセラー 伊藤憲治

🧠 発達特性・子育て・生きづらさを整理する「個別対応プラン」

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自身もADHD等の当事者であり、シングルファザーとして発達障害の娘の不登校を乗り越えてきた心理カウンセラー伊藤憲治(相談実績4万件以上)が、60分の音声ヒアリング(カメラ不要)+あなた専用の具体策レポート作成でじっくり伴走いたします。
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