― 成長の過程で見えてくる「自立」と「親の見守り方」 ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、50代の男性から寄せられたご相談をご紹介します。
思春期の娘さんをもつお父さんにとって、
「恋愛を通して少しずつ成長していく娘の姿」は嬉しくもあり、
一方で「まだまだ幼い部分が残る」ことに戸惑いを感じる場面も多いようです。
💬 ご相談内容
思春期の娘がいて、そろそろ彼氏ができたようです。
彼氏ができたら、
「部屋の掃除とかもしっかりやるようになるかな?」
「洗濯ものもちゃんと出してくれるようになるかな?」
と思っていましたが、全く変わりません。
ただ、彼が家に遊びに来るという日の前日だけは全力で片付けるのです。
普段からやっていれば焦らずに済むのに……と思い、
「普段から少しずつやっておけば?」と声をかけても、
「これでいいから!」の一点張り。
多少は身なりに気をつけるようになりましたが、
生活態度自体は以前と変わらないように見えます。
こういうことは、やはり彼氏との関係や、
これから社会で働く中での経験を通して学ぶものなのでしょうか?
🧠 回答:思春期の「自立」は“親の思う形”とは違う
とても多くの親御さんが、
このような「成長のギャップ」に戸惑いを感じます。
娘が恋愛を経験し、少しずつ大人びていく姿を見ると、
「生活面でもきっと変わるだろう」と期待するのは自然なことです。
しかし実際には、
「心理的な成長」と「生活面での自立」は別の速度で進むのです。
1️⃣ 「恋愛による成長」は“感情の世界”から始まる
恋愛は、思春期における自己認識の拡張です。
相手を通して自分を見る――それが心理的な成長の第一歩です。
娘さんにとっては、
「彼の前でどう見られるか」「どう思われたいか」という意識が芽生え、
それが外見や身だしなみに少しずつ反映されています。
しかし、それはあくまで**“対外的な自己イメージ”**の変化であり、
「内面的な生活習慣」までにはまだ波及していない段階です。
これは自然な発達の流れであり、
心理学的にも“内面の自立”が追いつくのはもう少し先だとされています。
2️⃣ 「やればできる」ではなく「やる気が出る条件が限られている」
思春期の脳は、報酬(ほうしゅう)システムが非常に活発です。
つまり、“やる気”は「今これが必要」と感じた瞬間にしか働きません。
そのため、
- 彼が来る → 「見られる」 → 「片付けよう!」
という明確な目的があると、エネルギーが一気に集中します。
逆に、「将来のため」「普段から」という曖昧な目的では、
行動のスイッチが入りにくいのです。
これは怠けではなく、発達段階による思考特性です。
3️⃣ 「これでいい」という言葉の裏にある心理
娘さんの「これでいい」は、反抗ではなく**“自己決定の主張”**です。
思春期の子どもは、「自分のやり方で生きたい」という感覚が強まります。
親が正しいと分かっていても、自分で選びたいのです。
心理的自立の第一歩は、「自分の意志を持つこと」。
たとえそれが非効率でも、「自分のルールで動けた」という感覚が
成長の糧になります。
🌿 親ができる3つの“見守り方”
🪴 ① 「失敗を経験する余白」を残す
掃除や整理整頓を通して学ぶのは、
実は「計画性」や「見通し力」ではなく、
**“自分の行動の結果を引き受ける感覚”**です。
つまり、
「直前に慌てたら大変だった」
「次からはもう少し早めにしよう」
――このような体験からしか、行動は変わりません。
親が先回りして整えると、
“自分で気づく機会”が減ってしまいます。
🌼 ② 「指摘」よりも「問いかけ」で伝える
「なんで普段からやらないの?」という指摘は、
思春期の子にとって“支配的な言葉”に聞こえやすいです。
代わりに、
- 「明日、どんなふうに準備したい?」
- 「彼が来るときに、どんな部屋にしたい?」
など、本人の選択肢を引き出す質問が効果的です。
「考える責任」を渡すことで、
内側の自立が進んでいきます。
🌙 ③ 「変わらないようで、変わっている部分」に注目する
思春期の変化は、外から見えにくい部分に現れます。
- 服装へのこだわりが出てきた
- 洗濯物の出し方が少し丁寧になった
- 家族に対して反応がやわらいできた
これらは「自己意識が芽生えている」サインです。
行動のすべてが完璧でなくても、
“方向性”が成長に向かっていれば十分なのです。
🎒 恋愛と「社会的自立」はどうつながる?
恋愛は、他者との関わりを通して「自分の立ち位置」を学ぶ体験です。
- 相手の気持ちを想像する
- 約束を守る
- トラブルを乗り越える
こうした小さなやり取りの中で、
社会に出てから必要な“人間関係の土台”が育ちます。
つまり、恋愛は「社会性を育てる予行演習」。
今はまだ片付けが苦手でも、
相手との関係の中で自然に“責任感”が芽生えていく時期なのです。
☕ お父さんに伝えたいこと
父親にとって、娘の恋愛は少し複雑な出来事です。
「大人になってほしいけれど、まだ心配」
――そんな矛盾した気持ちは、誰もが抱くものです。
けれど、思春期の娘にとって一番の支えは、
“信頼して見守る父親”の存在です。
「口うるさく言わなくても見てくれている」
「困ったら相談できる」
この関係があれば、娘は安心して世界を広げていけます。
🌸 まとめ
- 恋愛による成長は“感情の世界”から始まる
- 「生活面の変化」は時間差でやってくる
- 「これでいい」は“自己決定”のサイン
- 失敗から学ぶ力を信じて見守る
- 父親の静かな信頼が、娘の心を支える
💗 読者へのメッセージ
思春期の娘を見ていると、
「大人になったようで、まだまだ子どもだな」と感じる瞬間があるでしょう。
でも、彼女たちは確実に成長しています。
それは、目に見える“行動の変化”ではなく、
心の中で静かに芽を伸ばすような成長です。
親ができるのは、その芽を折らず、
安心できる光をそっとあて続けること。
「信じて見守る」――それが、思春期における最高の支援です。
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