― 思春期の心が折れそうなとき、親ができるサポートとは ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、以前にもご相談をくださった40代のシングルマザーの方から、
とても大切なテーマをお寄せいただきました。
思春期の娘さんが、学校から帰ってきたときに涙ぐんでいたり、
「失敗ばかり」「友達と話せない」「学校がつらい」と言葉にするようになった――
そんなとき、親はどのように迎え、どんな声をかければよいのでしょうか。
💬 ご相談内容
娘が学校から帰ってくると、表情がとてもつらそうな日があります。
泣いたような顔をしていることもあります。
理由を聞くと、
「学校にいるのがつらい」
「失敗ばかりでうまくいかない」
「誰とも話せず、すごく孤独だった」
などと話してくれます。
無理に明るく振る舞うこともあり、
気を張って頑張っているのが伝わってきます。
学校に行くことだけがすべてではないと思いますが、
社会に出たときにも似たような気持ちになる瞬間はあると思います。
このような状態のとき、
どのように迎え入れてあげるのがよいでしょうか。
また、どのような環境を整えてあげるのが良いでしょうか。
🧠 回答:落ち込んで帰ってきた子どもの「心の中」
まず最初に大切なのは、
「落ち込んで帰ってくる=弱いこと」ではないという理解です。
むしろ、それは「感情を表に出せている」という健全な反応です。
学校で無理をして頑張り続けた分、
家では“素の自分”に戻っているというサインでもあります。
1️⃣ 「学校での失敗」が重く感じられる理由
思春期の子どもにとって、学校は「小さな社会」です。
そこでうまくいかない体験――
たとえばグループ活動の失敗や、友達とのすれ違い――は、
大人にとっての仕事のミスや人間関係のトラブルに近い意味をもちます。
さらに、発達特性(はったつとくせい)をもつ子どもの場合、
「一度の失敗を過大に受け止めやすい」傾向があります。
脳の情報処理の特性として、
“嫌な出来事”の記憶が強く残りやすいことが分かっています。
そのため、
「今日うまくいかなかった」→「自分はいつもうまくいかない」
という全体化(ぜんたいか)思考になりやすいのです。
2️⃣ 「どうしてもつらい日」があるのは自然なこと
子どもはまだ、感情の整理(セルフレギュレーション)の力が育っている途中です。
感情をうまく言葉にできず、涙や沈黙でしか表現できない日もあります。
そのような日は、無理に話を聞き出そうとせず、
「おかえり」「がんばったね」だけでも十分です。
それだけで、「家では責められない」「安全な場所なんだ」と感じられます。
🌿 親ができる3つの対応ステップ
ここでは、思春期の子どもが落ち込んで帰ってきたときに
実際に役立つ3つのステップをご紹介します。
🕊️ ステップ① 「言葉より“空気”で迎える」
子どもが泣きそうな顔で帰ってきたとき、
大切なのは、言葉よりも“空気”です。
- 「どうしたの?」とすぐに聞くよりも、まず静かに迎える
- 荷物を置いて落ち着ける時間をつくる
- 親自身が穏やかな表情でいる
人は、不安定なときほど「相手の表情」から安心を得ます。
親が焦らず、温度のあるまなざしで迎えるだけで、
子どもは「ここは安全だ」と感じます。
🌸 ステップ② 「共感の言葉」をかける
子どもが話しはじめたら、
すぐにアドバイスをせず、共感から始めることがポイントです。
- 「それはつらかったね」
- 「そんなことがあったら、泣きたくもなるよね」
- 「がんばったんだね」
こうした言葉は、落ち込んだ気持ちを受け止める“クッション”になります。
もし、話を途中でやめたら、無理に続きを聞かず、
「話してくれてありがとう」とだけ伝えるのも良い対応です。
💬 ステップ③ 「次の行動」よりも「回復」を優先する
落ち込んでいるときに「明日はどうする?」と聞かれると、
子どもはプレッシャーを感じてしまいます。
この段階では、行動計画よりも感情の回復が先です。
- 温かい飲み物を出す
- 好きな音楽をかける
- ペットと過ごす時間をつくる
- 無言でも同じ空間にいる
こうした「安心できる時間」が、心の回復を促します。
☕ 家庭でつくる“安心の場”
🌙 1. 「家では失敗してもいい」と伝える
学校でうまくいかない日が続くと、
子どもは「家でもがんばらなきゃ」と感じてしまいます。
家庭では、「頑張らなくていい場所」であることを明確にしましょう。
- 「今日は疲れたね」
- 「失敗した日もあるよね」
- 「明日はまた違う日だよ」
こうした言葉は、“条件つきではない愛情”を伝えます。
🌼 2. 「気持ちを表に出していい」文化を育てる
「泣かないで」「元気出して」よりも、
「泣いていいよ」「泣けるって大事だね」と受け止める言葉が、
感情表現の許可になります。
親が「感情を表してもいいよ」というメッセージを出すことで、
子どもは感情をため込みにくくなります。
🌤️ 3. 「つらいことの後」にポジティブな体験を置く
心理学では、「快の経験」で「不快の記憶」を中和できることが知られています。
たとえば――
- つらい日ほど、家で好きな食べ物を一緒に食べる
- 一緒にテレビを見る・軽い散歩をする
- 「今日はここまでがんばったね」と笑い合う
失敗や孤独の記憶のあとに“あたたかい時間”があると、
脳は「つらい経験=完全な失敗ではない」と認識します。
🎒 学校との関わり方
💡 先生に伝えておくべきポイント
「娘さんがどんな場面で落ち込みやすいか」を共有しておくことで、
先生も気づきやすくなります。
- グループ活動で孤立してしまう
- 失敗を引きずりやすい
- 頑張りすぎて疲れるタイプ
こうした情報を伝えるだけでも、
学校内でのサポートの質が変わります。
🏫 学校への期待を“ほどよく”する
親の「学校に行ってほしい」という思いは自然ですが、
それが強くなると、子どもは「行かないと愛されない」と誤解します。
- 「行けたらでいいよ」
- 「休む日があってもいい」
この言葉は、「自分のペースを守っていい」と教える大切なメッセージです。
💬 親自身の心のケア
落ち込んでいる子どもを見ていると、
親の心も痛みます。
「自分の育て方が悪かったのでは」と自責する方も少なくありません。
けれど、それは違います。
あなたが毎日お子さんを迎え入れている、その時間こそが、
お子さんにとって最も大きな支えです。
時には、「一緒に泣く」ことも愛のかたちです。
無理に強くならなくていい。
“寄り添う”ことが、いちばんの勇気なのです。
🌸 まとめ
- 落ち込んで帰ってくるのは、「頑張った証」。
- まずは話を聞く前に、安心できる空気をつくる。
- アドバイスより共感。解決より回復を優先する。
- 家は「失敗してもいい場所」にする。
- 親も完璧でなくていい。共に悩み、寄り添うことで信頼が育つ。
💗 読者へのメッセージ
子どもが落ち込んで帰ってきたとき、
何を言えばいいかわからない――そう感じる親御さんは少なくありません。
でも、あなたの「おかえり」という一言は、
お子さんにとって世界で一番安心できる言葉です。
話さなくても、泣いても、沈黙しても大丈夫。
その沈黙の中にも、あなたのあたたかさは届いています。
今日もお子さんを迎えるあなたに、
「大丈夫、ちゃんと支えになっています」とお伝えしたいです。
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