― ADHD傾向のある子どもの人間関係と心のケア ―
こんにちは。心理カウンセラーの伊藤憲治です。
今回は、40代のシングルマザーの方から寄せられたご相談です。
発達特性(はったつとくせい)をもつ思春期の子どもが、学校で孤立してしまうとき、
親としてどう寄り添えばよいのか――とても大切なテーマです。
💬 ご相談内容
思春期の娘がいます。
小学校のときにADHDと診断されました。
中学に入ってからは、自分から友だちを誘うことができず、
グループや班でも「一緒にやろう」と声をかけるのが苦手です。
最近はお昼ご飯のときに一人になることが多く、
「みんなが楽しそうなのに自分は一人でつらい」
「独りぼっちな気がする」
「避けられている気がする」と泣くことも増えてきました。
その結果、学校を早退してしまう日もあります。
このようなとき、親としてどのように支えてあげればいいのでしょうか。
🧠 回答:心理学的な背景と支援のポイント
このご相談は、ADHD(注意欠如・多動症)のあるお子さんを育てる親御さんから、非常に多く寄せられます。
ここでは、心理学的な背景と、家庭・学校での具体的な支援方法を整理してお伝えします。
1️⃣ ADHDの子どもに見られやすい「対人関係の疲れやすさ」
ADHDのある子どもは、集中力の波や感情の揺れが大きく、
人との関わりで多くの情報を同時に処理することが苦手です。
そのため、友だちと長時間一緒に過ごすと、
「刺激が多すぎて疲れてしまう」「話題についていけない」と感じやすいのです。
また、相手の表情や雰囲気の変化を読み取るのが苦手な子もおり、
「うまく話せなかった」「嫌われたかも」と過剰に不安を感じることもあります。
こうした特性は「性格の弱さ」ではなく、脳の情報処理の特性に由来します。
2️⃣ 思春期に強まる「所属(しょぞく)欲求」と孤立のつらさ
思春期は、心理学者マズローの欲求段階説でいう「所属と愛情の欲求」が最も強まる時期です。
「仲間に入りたい」「一人になりたくない」という思いが非常に敏感になります。
この時期に孤立してしまうと、
「自分は受け入れられていない」という感覚が強まり、
自己肯定感(じここうていかん)が下がりやすくなります。
そのため、昼食を一人で食べるなどの場面は、
お子さんにとって「自分の存在価値が問われるような苦しさ」を感じる瞬間でもあります。
3️⃣ 「自分から声をかけられない」心理的な背景
自分から声をかけることができないのは、意志が弱いからではありません。
そこには、以下のような心理的要因が関係します。
- 不安傾向:「断られたらどうしよう」という恐れが強い
- 自己肯定感の低下:「自分なんて誘っても迷惑かも」と思い込みやすい
- 経験不足:「どう声をかけたらいいのかわからない」というスキル面の問題
このような場合、「もっと積極的にしなさい」と励ますことは逆効果になりやすいです。
まずは「怖いと思ってもいい」「無理しなくて大丈夫」と、感情を受け止めることが大切です。
4️⃣ 「学校に行きたくない」と感じる背景
お子さんが早退したり登校をためらうとき、
その根底には「拒絶される不安」や「安心できる場所がない」という感情が隠れています。
一見「さぼり」に見える行動も、実は自己防衛のサインであることが多いです。
大切なのは、「行けるようにすること」よりも、
まず「安心して休める時間を持つこと」。
心が落ち着くと、自然と「また行こう」と思えるようになります。
🌼 家庭でできる具体的サポート
🗣️ 小さなコミュニケーション練習
家庭は、子どもにとって最も安心できる練習の場です。
- 「今日の給食どうだった?」など、答えやすい質問を投げかける
- 「一緒にご飯つくろう」「散歩に行こう」など、協働の体験を増やす
- 「どう思った?」と感情を言葉にできる場をつくる
これらは、学校で「一緒にやろう」と言える力を少しずつ育てます。
🪴 感情を受け止める言葉がけ
- 「つらかったね」「それは悲しかったね」と、まず共感する
- 「でも大丈夫」と励ますより、「今は休もうか」と寄り添う
- 「またやってみよう」と再挑戦を促すときも、焦らせずに
親の一言が、子どもの心の安全基地になります。
🎒 学校とつながる支援の工夫
📘 教師への共有
- 「グループで一人になると不安が強くなる」
- 「昼食の時間に孤立しやすい」
このような情報を先生に伝えるだけでも、
学校側で配慮(はいりょ)を検討しやすくなります。
☕ 少人数で過ごせる環境を活用
支援教室・図書室など、
静かに過ごせる場所が「安心できる選択肢」となります。
💬 親が心に留めたい3つのこと
1️⃣ 「一人でいる=失敗」ではない
人と一緒にいる時間と、一人で休む時間のバランスは誰にでも必要。
2️⃣ 「がんばれ」より「休もうか」
無理をしないことで、回復力(レジリエンス)が育ちます。
3️⃣ 「子どもの世界を信じる」
親が信じる姿勢は、子どもに「自分を信じていい」という感覚を伝えます。
🌸 まとめ
- 思春期の人間関係は、「自分をどう見せるか」で悩みやすい時期。
- ADHD傾向のある子どもは、刺激や不安への感受性が強いため、孤立しやすい。
- 家庭での安心感と、学校との連携が「再びつながる力」を支えます。
💗 読者へのメッセージ
「一人でいるのがつらい」「避けられている気がする」
――その言葉の裏には、「本当は仲良くしたい」という願いがあります。
親としてできることは、その気持ちを否定せず、受け止めること。
そして少しずつ、「人と関わるのが楽しい」と思える経験を増やすことです。
お子さんが自分のペースで世界とつながり直せるよう、
あたたかく見守っていきましょう。
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